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第14話 虹の魔法少女⁉ 七光りのシエル ②

「よかろう」


 と一言、ヒルグリム先生はあっけなく決闘の承諾をしてくれた。

 断ってくれることを願っていたんだけどなぁ。

 そのまま流れるように決闘場に赴き、シエルと私で対面に立ってお互い杖を構える。


 シエルは虹のアーチの形をした装飾が先端についた杖を手に 、自信満々の笑みを浮かべている。

 一体どんな魔法を使うんだろう。

 不謹慎だけどちょっとワクワクしてきた。


「双方準備はいいな。それでは決闘開始!」


 ヒルグリム先生の合図とともにシエルが呪文を唱える。


「マイセルフ・ヴィブジオール・レインボーロード!」


 すると杖の先から虹がビームのように直線的に私の方に飛んできた。

 

 魔法ってアイかマイかミーかマインのどれかじゃなかったっけ?

 って考えてる場合じゃない!


「わわ! アイ・ラブリー・シールジョ!」


 やば。最後かんだ。

 でも魔法はちゃんと発生して、大きいハートの盾が前方に出現する。

 どうやらちゃんと心で念じれば呪文を正確に唱えなくても魔法を出すことができるようだ。


 しかしこの盾は攻撃を受けすぎると破裂して相手に攻撃してしまう性質を持っている。

 防御魔法に見えてかなり危ない魔法なのだ。

 今度は威力が強くなりすぎる前に引っ込めなきゃ。


「はっ! そんなもん、ウチには関係ねぇ!」


 しかし虹の光線はあっさりとシールドを貫いた。

 避ける間もなく光線が私に直撃、したと思ったらそのまま体をすり抜け、通り抜けていった。


「うぎゃあああ! やられたー……て、あれ? 何ともない」


 私のお腹を貫いて後ろに7色の光が伸びているが、私は痛くもなんともない。

 この魔法は攻撃じゃなくてただの虹色の光を出しただけってことなのだろうか。


「おらっ!」


 次の瞬間、ハートの盾を通り抜けて、シエルが虹の光に乗ってこちらに向かって飛んできた。

 盾をすり抜けて近寄ってきたシエルのキックが、私のお腹に直撃する。


「へぶっ! な、なになに? 何が起こったの⁉︎」

「はっはっは! この魔法はウチだけが通れる虹の道を通せるのだ!」

「ええ! そんなのずるーい!」

「ずるじゃねーし! 盾だろうが何だろうが、ウチが通れない場所はない! さあどんどん行くぞ! マイセルフ・ヴィブジオール・レインボーロード!」


 どんどん虹の道が量産されていく。

 決闘場が埋め尽くされるほど虹の道ができて、ここ一帯の色が滅茶苦茶でとんでもないことになった。

 そしてそのできた虹の道をシエルは自由に駆け巡る。

 遊園地のジェットコースターみたいにぐねぐねと曲がってこちらに攻撃を仕掛けてきた。


「わあ! きゃー! ひえぇ」


 魔法少女の力と速さで次々と襲いかかってくる。避けられるけどとても危ない。

 単純に怖いし、それにシエルの攻撃に全く躊躇や遠慮というものがない。

 本当にこちらを倒そうとしてきているのが肌感覚で分かる。


「オラオラどうだ! うちの魔法の前に手も足もでないだろ!」

「んもう! いい加減に、しろー!」


 相手が来るのに合わせて手を前に出した。シエルはそれでも止まらずに前進してくる。

 そのままぶつかるかと思いきや、シエルの体が私の体をスルッと通り抜けて行ってしまった。


「ムダムダー。お前の体も通り抜けられるんだよー」


 何てこった。こっちの攻撃が当たらないなんて、絶対勝てないじゃん。

 ……あれ、でもそれって向こうも攻撃が当たらないってことなんじゃ?


「おらおらおらー! どんどん行くぞー‼︎」


 有言実行でどんどん虹の道を作って、バンバンキックやらパンチやらしてくる。

 私はそれに合わせて手や足を前に出した。すると向こうはなんか勝手に通り抜けて行った。


「ほい! あ、ほい!」


 目を凝らしたら向こうの動きは何となく分かった。

 虹がかって見えづらいけど、ちゃんと目で追って対応することができる。


 魔法少女になって体が強くなってるってことは、動体視力も上がっているわけで。

 これも私の体内に流れる魔力とやらのおかげなのだろう。


「この! ちょこまかちょこまかと! マイセルフ・ヴィブジオール・レインボーロード! フルパワー!」


 最大出力、って感じで魔法を打ってきた。

 どデカい虹がこちらに向かって飛んできて、地面を大きくえぐって壁に突き刺さった。

 ように見えるだけですり抜ける魔法の虹がかかっただけなのだが、これで足場が消えてしまっている。

 その間に向こうは凄い勢いでこちらに向かって飛んできた。


 さっきから思っていたのだが、この子は魔法という割には通り抜ける虹を作るだけだ。

 物理的な攻撃しかしてこない。しかも愚直に突っ込んでくるだけ。

 次に何をしてくるのかが、私でも読みやすい。


「これでとどめだー!」


 シエルが虹に乗って特撮ヒーローみたいに飛び蹴りしてきた。

 この状態はピンチなのだろうけど、私の脳には恐怖とは別に疑問が渦巻いていた。

 ところで、なんで私とこの子は戦っているんだっけか?


 私は魔法少女だから大丈夫だけど、魔法少女の力でキックなんか食らえば普通の人ならひとたまりもないだろう。

 そもそも暴力をふるうこと自体が異常なのだが、それにしても彼女の態度は少し冗長しすぎている。


 この学園がそうさせているのか。それとも今まで誰も彼女を怒ってくれる人がいなかったのか。

 ちゃんと注意してあげなきゃ。こんなことしちゃいけないよって。

 私は杖の先端に魔力を込めた。


「アイ・ラブリー・エクスプローラ!」

「ムダムダ! ウチの魔法は攻撃魔法もすり抜けるんだよぉ!」

 

 私の狙いは攻撃することじゃない。

 杖の先端を後ろに向けると、ハートが飛んで後ろの壁に向かって飛んで爆発が起きる。

 その爆風に乗って、私の体が吹き飛んで地面の前方に転がりこんだ。


「なにぃ⁉︎  ああ〜‼」


 シエルの勢いは止まらず、私の体の上を通り越して斜め下に飛び落ちて行った。

 決闘場の周りはそれも断崖絶壁と言っていいほどの崖に囲まれている。

 しかも下の方が黒くて全く見えないくらい高い。


 ガコンボコンとイヤな音を立てながら、下へ落ちていく音が聞こえてくる。

 私は崖の際に顔を出して、シエルを呼んでみた。


「おーい、大丈夫―⁉︎」

「魔力切れで昇れないよぉー! 助けてぇー!」


 どうやら無事なようだ。

 でも自分で上がってこれないのはまずいな。


「待ってて! 今助けに行く! ……あ、でもその代わり降参してよー! そしたら助けたげるからさー!」

「はぁ⁉︎  誰が降参なんか!」

「いいのかなぁー。帰っちゃおっかなー」


 分かりやすく足踏みして足音を立ててみると、下の方から慌てた声が聞こえてきた。


「ま、待って! 降参するから助けてぇ!」

「うん! いいよ!」


 その瞬間、ヒルグリム先生が現れて試合終了の宣言をした。


「この勝負、愛諸星の勝利とする。……何をしている?」


 私は崖を自分の手足を使って下りようとしていた。

 空飛ぶ魔法は使えないけど、魔法少女の身体能力があれば何とかなるはずだ。


「あ、先生。ロープとかありませんか? あの子を助けてあげようと思って」

「負けた者に情けをかける必要は無い。放っておけ」

「でも約束しちゃったし……。それに人を助けるのが魔法少女でしょ!」

「……勝手にしろ。私は手伝わんぞ」


 先生はそう言ってカラスに紛れてどこかへ消えてしまった。

 生徒のピンチだというのに薄情な先生である。


「おーい、早く助けてくれよー!」

「もうちょっと待ってー! 急いで行くからー! よいしょ、よいしょ」

「おいまさかお前、飛べる魔法を使えないのかぁ?」

「うん! でもがんばってそっちにいくよ!」

「ひーん! もう嫌だー! 暗いよー怖いよー助けてよー!」


 私はどうにかこうにか尖った岩先に引っかかっていたシエルを担いで、崖を登り切った。

 のだが、シエルは「覚えてろー」と捨て台詞を残して決闘場から走って出て行ってしまった。


 やれやれ、これでは助け損である。

 でも良かった。

 私はこの勝負で誰も傷つけずに、舞ちゃんを守ることができたのだから。

続く!

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