あの日の判断は正しかった。
あの日は最近結婚して有頂天な自分でも嫌になるほどジメジメした6月の17日の日のことだった。妻に起こされ、リビングへ行くとスポーツ番組をしていた。妻に「あなたも頑張らないとすぐ追い越されちゃうわよ」と言われ、自分は「大丈夫だよ。最近国際大会でもいい成績が出てきてるし、いつか生まれてくる子どものためにも稼いでくるよ」というしかなかった。実は私はスポーツ選手をしている。だがトップ選手というほどでもない。その競技をある程度やってる人なら知っているであろうぐらいの知名度だ。でも最近はあまり上手く行っていない。自分が所属しているチームからは「今季中に結果が出なければチームへの残留は厳しい」とまで言われてしまった。それでも諦めず1ヶ月後の大会に向けて朝のストレッチと食事をすませ、栄養ドリンクを片手に家をでた。練習場まで車で15分程度なのでその間にニュースや今日一日意識することを胸の中で考える。そのとき赤信号で止まったらある光景が目に入ってきた。少女が転んでいる。見た目は小学1年生だろうか、黄色い通学帽を被りランドセルにはランドセルカバーをつけている。周りに人はいないということはないがみな関わらないようにしている。それはそうだ。普通の人なら今の時間は遅刻するかしないかの瀬戸際の時間だ。現に小走りをする人や腕時計をチラチラ見る人などが見られる。普段自分はこういうときに関わらないようにしている。でも何故か今日は違った。何故か自分の心に正義感と言うなの力が湧いてきた。車だったがコンビニがあったのでそこに停め声をかけた。「大丈夫?絆創膏あるからはろうか?」と聞いた。そしたらその子は小さく心細そうに頷いた。車に乗せるのは犯罪に触れそうなのでコンビニの看板の床に女の子を座られ血を拭き、絆創膏を貼った。すると小さな声で「ありがとう」と聞こえた。その声を聞いて自分いい事としたなと自己肯定感に少し浸っているととてつもない騒音が聞こえてきた。ここは交通量が多い交差点でたまに事故などが起こる。でもそれは明らかに普通の事故の音ではない。1台の車がモースピードでこちらに向かってくる。自分には当たらない位置に向かっていて安心した、がよく見れば女の子の方に向かっている。最悪だ。女の子は呆然とした顔で突っ立っている。それはそうだろうその年でモースピードで車がきたら足が恐怖ですくんで動かないこともあるだろう。私は判断した。選手の中でも判断力だけはピカイチだとコーチから言われていた自分を信じて、女の子を抱きかかえた、が本能的に悟った。これは二人共助からない、だから私は女の子を投げ飛ばした。この年になって女の子を投げ飛ばすなんて想像もしていなかったが覚悟できたら人は大抵のことはできるんだと感心した。自分はせめてもの思いで頭を手で覆い隠した。何ともいえない鈍い衝突音したのを最後に自分は意識を失った。