カエルのケロ助 Ver.1.31
カエルのケロ助は旅をしていた。
旅の道中、黄金のハエのうわさを聞きつけ、ある村を目指していたのだが、もうとっくにそのことを忘れているだろう。
所詮両生類である。
忘れっぽいのである。
道中ケロ助は一匹のコオロギに出会った。
「すみません。ちょっとお尋ねしますが、この辺りに黄金のハエがいると聞いたのですが。何か知りませんか?」
覚えていた。
まあ、ともかくケロ助はコオロギにそう質問したのである。
するとコオロギはケロ助に答える。
「申し訳ありません。私も旅の身でして、この辺りの事はよく知らないのです」
「ああ、そうですか。どうもすみません。ありがとうございます」
ケロ助とコオロギはお互い会釈して、それぞれの道を行こうとしていた。
「ああ、もし・・・」
コオロギが足を止め、ケロ助に質問する。
「道中、コロ助と言う名を聞いたことはございませんか?コロ助は私の生き別れた弟の名でして。私はコロ助を探して旅をしているのです。どんな手掛かりでもよいのです。何か知りませんか?」
コオロギは複眼でケロ助にすがるように見つめている。
ケロ助は天を仰ぎ、そして何かを思い出したようだ。
バクッ。
おいしかった。
「天におわします我等の神よ。今日この時も生きていられることに感謝します。いただきます」
ケロ助は意外と信心深い。
ちゃんと食事の前にお祈りをするのだ。
しかし、もう食事は終わった後であった。
ケロ助はもぐもぐと口を動かしながら、ふと考えた。
生命とは何か?
何億年も前に生まれたとされる生命。
まるでデオキシリボ核酸に意思があるように他者よりも強く、他者よりも多くと今まで歴史を積み重ねている。
そういう意味では星々も同じなのだろう。
引力と言う食欲の下、より大きくと相争っているのだろう。
我等は他者を犠牲にしながら生きていくことを厭いながらも、我等は他者の屍を踏みしめながら生きていく。
先程の俺がコオロギを食ったように。
しかし、それも仕方がない事。
我々は膨張する宇宙の欠片で出来ているのだから。
より大きく、より強く。
そのようなものが我等を構成する原子に刻まれているのだ。
そんな事を考えながら、ケロ助は口に引っかかっていたコオロギの足を口に放り込んだ。
まあ、何が起ころうとケロ助の旅は続くのだった。