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大相撲界のRTA走者、15日間トータル取組時間3分以内を目指そうと企む

作者: 明石竜

 力士には三分以内にやらなければならないことがあった。

 それは、取組の決着である。

 とはいえ義務ではなくむしろ三分以上も取組を続けて水入りにまでなると、観客からは大熱戦だと喜ばれるのではあるが、力士側からすれば体力の消耗が非常に激しく、翌日以降の取組にも影響が出かねないので、正直早く決着をつけたい、楽に勝ちたいと思っている力士も中にはいらっしゃることだろう。

 


豊刀龍ほうとうりゅう、おまえは勝負を早く決め過ぎだ! 大関、横綱目指すにはそんな取組続けてちゃダメだ!」

 山梨県出身のとある若手平幕力士は、春場所のある日の取組のあと、所属部屋の親方から呆れ顔で激怒された。 


 豊刀龍という力士、決まり手の多くが叩き込み、突き落とし、蹴手繰りで、立ち合い変化をすることもしばしばあり、取組開始からほんの2,3秒以内で決着をつけることが多く、さらに負ける時もあっさり土俵を割ってしまうことがよくあるのである。

 ファンの間でもSNSでは『豊刀龍さん無理をしない』とか『省エネ相撲』とか『本場所でも花相撲』とか揶揄もされているわけである。


「豊赤龍を見習え。負けはしたけど水入り挟んだ五分越えの大熱戦だっただろ。おまえもただ安易に勝てばいいという相撲ばっかりやってないで、たまにはあんな感じの大熱戦を繰り広げれば、女の子のファンだってもっと増えるぞ!」

 同部屋の兄弟子を引き合いに出した親方からの叱咤激励も、豊刀龍には響かなかったようで、

 だってがっぷり四つで戦ったらめっちゃ疲れるし、土俵際であんなに粘ったら怪我するかもだし、今場所は15日間トータルで三分以内のRTA目指そっかな。

 と心の中で考えてしまうのであった。

 彼はテレビゲームが趣味で、RTA走者の超人的なプレー動画に感銘を受け、大相撲の取組にもRTA要素を取り入れてしまったわけである。

 そして彼の計画通り、この場所の力士ごとのトータル取組時間、二位以下を大きく引き離し、ダントツで一番短い名誉とも不名誉ともいえる記録を作ったのであった。



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