やっぱり後輩ちゃんは後輩ちゃん
「せーんーぱっい!追っかけてきちゃいました!」
そんなことを言いながら彼女、夢川蛍は僕の前に1年ぶりに姿をあらわした。
「蛍、この高校受けてたんだ。偏差値的に難しかっただろうにどうしてここにしたの?」
僕は蛍に純粋に思った疑問を聞く。そうすると蛍は目をぱちくりと驚いたようにこちらを見ている。
「だから言ってるじゃないですか!先輩に会いたいから追っかけてきたんですよ!」
「ほんとにそれだけの理由でここを受けたの?」
そんなことを僕が言うと蛍は
「そ、そんなこと!?私にとって一番大事なことだったのに!!!」
と声を大にして主張してくる。声が大きくなったことで周りのこちらを見る目線が多くなる。内心気が気ではない。そしてさっきまで女子たちと話していた春樹もことらに気づいてしまったようで速足でこちらに向かってくる。
「ゆ、悠!なんだよその女の子、めちゃめちゃかわいいじゃねぇか!!いかにも自分関係ないですみたいな感じだったのに!どうやったんだよ!」
「別に。中学校の時の後輩だよ
「夢川蛍です。こんにちは~」
「こんにちは!染井野春樹です!!蛍ちゃんでいいかな?よろしくね!!!!!」
春樹は興奮ぎみで話しているが蛍は少し、いやかなり引きぎみに「よろしくお願いします...」と返事をしている。こんなのに気づけない時点で女子にモテるとがは思えないんだがと思ってしまう。
「蛍ちゃんこの後ひま?3人でご飯いこうよ!」
春樹が蛍をご飯に誘っているがなぜかそこには僕もカウントされていた。
「ちょっと待て春樹。なぜ僕も食べに行くことになっているんだ?」
「え、来ないの?」
「行かない。もう早く家に帰りたい。」
「ちょっとちょっと!!!それはないだろ!!!」
僕と春樹が口論しているとクスッと笑ったような声が聞こえて横を見る。
「ごめんなさい。染井野さん。先輩は私と¨2人¨で行きたいみたいですー」
蛍が自然に爆弾を落としてきた。それはもう違和感もなく急速度で。
「悠!!!抜け駆けは許さないぞ!」
春樹が怒ったようにこちらを向く。正直もうめんどくさくなってきたこともあり、蛍の話に乗ることにした。
「そうゆうことらしいから。春樹、また明日ね。」
「ちょっと待ってって!おい!!!」
春樹がそのあとも何か言っているが気にせず蛍に「行こっか」と声をかける。
蛍の目がキラキラと輝きこちらをうれしそうな目で見ている。
「せっかくここに入学できたんだから今日は僕が奢るよ。何が食べたい?」
「えーっと、この近くなにがありますか?」
「ラーメン、パスタ、ファミレス?」
「じゃあファミレスでお願いします!」
「ん。」
僕と蛍はファミレスに向かって2人並んで歩いた。
ファミレスで一通り食べ終えた後、僕は蛍に言った。
「まさか夢川が東山高校受けるとは思ってなかったよ。それに受かったなんてすごいね」
「そーですよ!めちゃめちゃがんばんたんですからね!だから初日に先輩に会えて、それにご飯までごちそうになって今日は幸せです!!」
蛍は心の底からうれしそうに笑った
「先輩はこの一年間私に会えなくて寂しかったですか?寂しかったですよね!!」
蛍から圧のある言葉が届く。僕は苦笑しながら
「そうだね。」
と返事をする。その言葉を聞いた蛍は目を輝かせ「えへへへ」と照れたように笑う。そのあと一年間で何があったかなど二人で雑談をした。小一時間たち、そろそろ帰らなくちゃなと考え始めた時、蛍が口を開いた。
「そういえば先輩。東山高校も放課後、図書室が使えるって聞いたんですけど...」
僕はその言葉を聞き後に続く言葉を聞く前に理解した。
「また私に放課後勉強を教えてもらえませんか?」
蛍はこちらを少し遠慮がちに見てくる。僕はうつむいて考えた。僕に関わることで蛍が苦しくならないか。また僕の中にある一番の問題である¨あれ¨。でも蛍の目を見た時自然とその言葉が出ていた。
「もちろんいいよ。また一緒にがんばろうね。」
その言葉を聞いたとき蛍は
「はいっ!お願いします!」
とこちらを見ながら嬉しそうに言った。
そのあとお会計をしてファミレスから出て2人で帰路についた。別れ際に蛍が僕に声をかける。
「あの、先輩!」
「どうしたの?」
僕は蛍を見る。蛍も僕を見て言った。
「先輩、またこれからもよろしくお願いしますね!!!」
その時の蛍の顔は満面の笑みで、とてもきれいだった。でも僕にはまぶしすぎて、目を背けたくなった。
「ああ。よろしく。」
僕にはそういうのが限界だった。でも彼女は嬉しそうに大きく手を振りながら帰っていく。
僕も小さく手を振り返し家に向かって歩き出した。