僕と君の再開
「えー!?先輩、東山高校行っちゃうんですか!?!?」
突然の大声に驚きながら僕、雲居悠は顔を上げて目の前に座る彼女を見る。
「うん。親がギリギリ許してくれたのがここだったから...」
「ギリギリってあそこの高校偏差値70超えてますよ?どれだけ厳しんですか...」
そのあとも何か言っているが声が小さくて聞こえない。僕が参考書に視線を戻そうとしたときにボソッと
「私じゃ無理ですよね...」
そんな少し落ち込んだように彼女がつぶやいた声が聞こえた。そんな声がいじらしくて僕はクスっと笑いながら彼女に言った「ーーーーーーーーーーーー」
チリリッチリリリと僕は目覚まし時計の音で目を覚ました。時計を見る5:30をさしていてまだ活動し始めるには早い時間だった。
(なんだか懐かしい夢を見たな...)
そんなことを思いながらベッドから起き上がる。そして最近は会えていなくて、もう会うこともないあの子のことを考える。中学校で出会ったあの子は少し勉強ができなかったけど、いじらしく、とても元気でとてもいい子だった。そしてほぼ毎日のように放課後の図書室で勉強をしていた。
(今頃どうしてるかなぁ)
そんなことが頭をよぎる。僕とあの子は学年が一つ違いでちゃんと進学できていればあの子は高校一年生、僕は高校二年生になる。そんなことを考えていたら思っていたよりも時間がたっていてまずいな、と登校の準備を始める。そんな時僕はボソッと
「幸せに暮らしていればいいな...」
と自然と口に出していた。
「おーっす!悠!」
と通学路を歩いていたら声が聞こえた。
「おはよ、春樹。」
僕は声の主である同級生の染井野春樹に返事をする。こいつは高校の同級生で、入学式初日に迷子になってなんかかわいそうだったので一緒に登校したら向こうからはなしかけにきてくれるようになった。
「やっぱ新学期だるいわ。ずっと休みがいい。」
「とかいって休み中は暇だわーってずっと言ってたくせに。」
「うっ、まあまあ悠、細かいことは気にするな」
なんにも細かくないけどな。と思いながら並んで学校に向かう。今日は入学式兼始業式なのでいつもより通学路にいる人数が多い。
「いやー今年はどんなかわいい子がいるのかなー。誰か彼女になってくれないかなぁ」
そんなことを春樹が突然いいだした。通学路の人数が多いのにこいつも気づいたのだろう。
「はいはい、できるといいですね。」
「おいおいおい!!お前なんだよその適当な返事は!俺にとって一大イベントと言っても過言ではないんだぞ!これを逃したらいつ彼女ができることやら...」
「きっとできないから安心しとけ。」
僕は適当に返事を返すとスタスタと歩く。早めに家を出たとはいえのんびりしていては遅刻してしまう。
春樹もそれが分かっているのか不貞腐れながらも歩く足を速める。そんな時ふとあの子のことを
思い出す。
(あいつが進学したのが公立なら、あいつも今日入学式か)
普段考えないことだが、今朝見た夢の影響だろう。そんなことを考えてしまった。
高校についてSHRを行った後、体育館に移動して始業式、終わり次第入学式の準備をして入学式を行った。
すべてが終わって教室に戻ったときは少し疲れが出ていた。そんな疲れを振り払うように体を伸ばしていると春樹がこちらに近づいてきた。
「いやーさすがに校長の話を連続で聞くのはきついわ。眠すぎ、耐えるのつれぇ」
「耐えるどころかずっと寝てただろ」
「やめろ。そこは俺に気を遣うとこだろがよぉ!」
そんなことを言いながら小突いて来ようとするので脇腹に軽く打撃を与える。
グフッ!?とうめき声が聞こえた。顔を見ると涙目になっているが気にしないことにした。
「そういや悠聞いた?今年の新入生めちゃめちゃかわいい子が何人かいるらしいよ!俺終わったら声掛けに行こうかな?!」
そんなことを春樹は突然言い出した。
「いいんじゃないか。がんばって女子の連絡先でも交換してきたらどうだ」
「なんで他人事なんだよ。お前も行くんだよ!」
「なんでだよ、別に興味ないしめんどくさいだけだよ。」
なぜか春樹の中では僕も一緒に行くことになっていた。
(はぁ、いやだって言ってもどうせ連れていかれるんだろうな...)
1年友達をやってわかっていることだがこいつは頑固で自分が一度言い出したことなかなか曲げない。
僕は半ばあきらめながら外の景色に目を移した。
放課後、春樹に連れられ3階に来ていた。この学校では1年生から順に3階、2階、1階と階層が下がっていく。春樹は絶賛後輩とおしゃべり中だ。どうにかして連絡先を交換しようとしている。ただ僕には関係がないことなので窓際の壁に背中を預ける。
(はぁ、どうせ付き合ってもふられてダメージを受けるのはあいつなのに。なんであんなに必死なんだ。どうせ裏切られるなら最初から.....)
春樹を見ていてそんなことを考えてしまい深いため息をはく。こんなことを考えてしまう自分が
嫌になる。
(帰ろ。勉強しなきゃ。)
僕は階段にむけ歩き出した。そんなとき、トントンと肩が叩かれ「あのっ」と声が聞こえる。
なんだか聞いたことがあるような声で不思議に思いながら後ろを振り向くと頬に細い指が刺さる。
「やーい、ひっかかったー!」
そんな無邪気な声が聞こえ、少しムッと思いながら最後まで無理むくと......
「え、なんでここに...]
振り向いた先に居たのは中学校でほぼ毎日のように一緒に勉強をして、今日も夢に出てきてしまった。
そんなここにいるはずのない彼女、夢川蛍が満面の笑みを浮かべながら
「せーんーぱっい!追っかけてきちゃいました!」
僕はこれからの高校生活が何か変わる気がして内心でヒヤヒヤするのだった。
あとがき
はじめまして。しろくろと言います。少しずつ投稿頻度は遅いかもしれないけど書き進めていこうと思っています。誤字脱字などがあればコメントで指摘してくれると幸いです。コメントなどをしていだだけると主は飛び跳ねて喜びます。これからもよろしくおねがいします。