初めての一人暮らし
7年尽くした嫁ぎ先を自分の足で出てきました。青空に浮かぶお日様さえ、ダリアを祝っているようだ。セバスとマーサに住むところを知らせ、いつでも来て欲しいと手紙を書いた。
ダリアは、父にもお義母様にも秘密にしていることがある。10歳頃、夜中にトイレに行くのに暗いので 明かりが欲しいと思った。いつも思うのだが、その時は雷がなって怖かった。明かりが欲しいと強く願った。驚いたことに指の先にほの暗い灯が浮いていた。
お伽噺の魔法か!! 不安や恐怖より驚きとワクワクに胸が躍った。次の日には明かりが灯らない。次の日には明かりが灯った。出来たり、出来なかったりを繰り返した。
ダリアは子供の頃、親に似ない自分は貰い子でないかと思ったことがあった。父や母に似ない黒髪 黒目、父や兄・姉の考えについていけないことが多々あった。
「お父さんの曾祖母が黒髪、黒目だったから曾祖母似だね。曾祖母は、魔女だったんだって。ダリアみたいにちょと変わっていたらしいよ」
励ましてくれた父の言葉を思い出した。子供のダリアは、魔女を目指した。大人になっても魔女にはなれなかった。
街の喧騒よりやや離れている。落ち着いた住宅地。古いと言ってもギルド管理なので住むには困らなかった。新居に入り、窓を開けて風を起こす。埃や塵を纏めて窓の外に出す。それほど汚れてはいない。部屋ごとに「きれいになれ!」と声を掛ける。古いなりにも艶のある柱や壁が現れる。
頑張りすぎると倒れるので、1階だけ済ませる。今日はソファーで寝ることにした。
三日後 家の内部は綺麗になった。外回りが突然変化したら大騒ぎになるから、夜な夜な少しずつ修復する。その後、井戸から水をくみ上げる水道工事をしてもらう。魔石を使って汲み上げる。
貴族の家では当たり前の魔道具 お風呂場にはお湯も出せれる魔道具を奮発した。台所の窯は、煮炊きが楽にできるように魔石コンロに変えた。裕福な庶民や、宿や食べ物屋でも使われているので、魔石コンロはだいぶ安くなった。
7年も屋敷に閉じこもって仕事をしていたダリアは、外の生活を知らない。庶民として生活するには服装と話し方から変えなければならない。髪の色をよく見る栗色に変える。さすがに瞳の色は変えられない。いつも仕事しやすいようにアップにしていた髪をゆったりと下ろし緩く一つでまとめる。
まずそれだけでラザフォード家のダリアだと気が付かない。
服は、ドレスを売って それなりのワンピースを購入した。ドレスについていたレースをつけ足して ちょっとしたおしゃれ着にしてみた。話し方は、苦労して貴族言葉を話していたので元に戻るだけだ。
まずは自分のためにご飯を作り洗濯をする。近所に買い物をする。生まれてこの方ほとんどしたことが無かった。やろうと思えば出来るものである。焦げたベーコン、美味しくないスープ、美味しいのは買ったパンだけだった。それも繰り返せばそれなりに食べれるようになる。
洗濯や掃除は生活魔法が助けてくれる。独り暮らしを慣らしながら、生活費を稼ぐ方法を考えていた。
商業ギルドカードに十分な資金が入っているので、慌てることはない。
誤字脱字報告ありがとうございます