伯爵邸を後にする
伯爵邸の中庭に寄り添う親子の姿を見た。時折笑顔で語らう姿は微笑ましいものになっていた。ダリアはもうここに残る必要は無くなった。すこし深入りしたのかもしれない。
伯爵にお暇をいただくことにした。執事に伯爵様との面会の依頼をお願いした。
「ダリアさん、帰宅したいということだが・・」
「はい、長期にお世話になってしまいました。お嬢様も元気になりました。伯爵様とお心を通わせました。もう私のすることはありません。店に戻ろうと思います。店の者にも迷惑をかけてしまいましたから」
「このままここに居てはくれないのですか?」
「わたくしはお店を持っています。今回は色々なことが重なったため、伯爵邸に残っていました。もう私が残る理由はないと思います」
ダリアの毅然とした声に伯爵は驚いている。ダリアからしたらここまで残ったのはお嬢様の体の回復の事があったからだ。あとは伯爵が娘をしっかり守り育てなければならない。
「ダリアさんは、ベッツの母にはなってくれないのですか?」
「はあ?なんでベッツの母にならなければならないのですか?妻が必要なら貴族のしっかりした令嬢を探してください。私は貴族に嫁ぐつもりはありません」
「・・・ベッツが淋しがる」
「お嬢様を支えるのはお父様の伯爵です。お嬢様はこれから令嬢として生きていかなければなりません。新しい未来に向けてこれからの事を話し合ってください。伯爵もお嬢様のための結婚など考えないように。結婚相手はあなたの使用人ではないのです。その女性にもお心があるのです。
相手を思いやる心が無ければ夫婦も親子も上手くはいきません。貴族らしい政略結婚でも思いを育てることは出来ると思います。幸せになる努力をしてください。お世話になりました」
何か言いたげな伯爵様を置いて、執務室を退出する。
「お嬢様、ダリアは明日、家に戻ります。もう私の手は必要ないでしょう。これからはお嬢様が皆に助けてもらうのでなく、お嬢様が皆を守れるような貴族の令嬢になって下さい。
少し回り道しましたがお嬢様には伯爵様が付いています。これからの未来が明るいことを願っています」
午後のお茶をしながらダリアはお嬢様に伝えた。
ダリアの顔を伺いながらお嬢様はあきらめたように声を出した。
「やはり屋敷を出ていくのですか?」
「はい、私にはお店が待っていますから」
「お父様はお許しになったのですか」
「はい、許可を貰いました」
お嬢様は決意した顔でダリアに話を続けた。
「我儘を言ってはいけないのですね」
「そうですね。もうお嬢様に私は必要ないです。これからは自分のやりたい事、やらなければならない事があります。間違えることも失敗することもあるでしょうが日々の努力です。素敵なレディーになって下さい」
「頑張ったらなれますか」
助けを求めるような瞳をダリアに向ける。
「なれます。お嬢様自身が成ろうと思えば皆さんが助けてくれます」
「また会えますか」
「会えます。会えるのを楽しみにしています」
涙を浮かべながらもお嬢様は『行かないで』の言葉を飲み込んだ。
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