伯爵様とお嬢様
ダリアはなし崩しにブルックリン伯爵家に残り、お嬢様のお世話をしていた。ベッツイナお嬢様は 自分の世話係が毒を盛っていたことを知った。
精神的にも肉体的にも弱っていったお嬢様は、ごく身近な者しか側に寄せなかった。侍女のマナとダリア以外の手を借りるのを拒んだ。食事でさえ食べようとしない。ダナトリス伯爵はどうしてよいかわからずダリアに頼ることしかできなかった。
ダリアは時折店に顔を出すも自分がいないとお嬢様が飲食しないので、結果として伯爵家に戻ることになった。店はほぼリリーとマーガレットに任せることになった。
お嬢様の体を拭き清めながら心の中で『きれいになれ』『きれいになあれ』と唱える。体内の毒が消えるように心の中の陰りが消えるように毎日毎日唱えた。手足をマッサージして自力で手足を動かす訓練を促す。清浄な朝の空気を胸いっぱいに吸い込んでは吐き出す。
本の読み聞かせはダリアが行っていたが少しづつお嬢様が読むようになる。
前から好きだった刺繍も再開し伯爵様に刺繍入りのハンカチを送ることもできた。時と共に少しずつお嬢様の体調が良くなる。
笑顔も増えマナやダリア以外の使用人とも話せるようになってきた。
秋が過ぎ冬が過ぎ事件が発覚して半年たった。お嬢様は普通に食事がとれるようになった。ダリアや侍女の手を借りて屋敷内を歩く練習している。
あとは、伯爵様とベッツイナーの関係の修復だった。伯爵様は毎日朝と城からの帰宅後お嬢様の部屋に訪れている。娘を愛していることは間違いないがどうしたらいいかわからない。お嬢様は伯爵が自分を気にかけているのは分かっているが、声を掛けれない。御互い思いあっているのに行動が伴わない。
「伯爵様、そろそろ朝食をお嬢様ととってはいかがですか?このままではお心が離れたままになります。お部屋に迎えに行ってエスコートして朝食をとる。それから始めましょう」
執事や侍女長に協力してもらい強制力を持たせる。最初はぎこちない二人だった。お嬢様が何回目かの食事の時に、刺繍をしたハンカチを手渡した。伯爵は思わずお嬢様を抱きしめた。
「ありがとう。とても嬉しいよ。よくここまで回復してくれた」
公爵様は初めて、お嬢様の前で目頭を熱くした。伯爵様とお嬢様の間に少しづつ信頼と愛情が育っていく。二人に笑顔が増え、屋敷の中にも明るい空気が広がっていった。
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