ハンナは子爵夫人を夢を見た
ハンナはダイアナート子爵の愛人だった。いずれは正妻にしてくれると約束されていた。ダイアナート子爵の妻は夫の女遊びに呆れて娘を残して実家に戻ってしまった。エリザベーナの養育は乳母任せだった。
子爵は世間体を気にして離婚話が進まない。エリザベーナは我儘な子供になっていった。ハンナが結婚できるのはまだ先の話。ハンナにとってエリザベーナは決して可愛い娘になど成りえない。
平民で不倫の相手との再婚などエリザベーナは許すはずがない。さっさとどこかに嫁いでもらいたい。伯爵家のお茶会でエリザベーナはダナトリス伯爵に一目ぼれしてしまった。妻が居るのだから伯爵に懸想していても実る恋ではない。それでもエリザベーナは恋焦がれいずれはブルックリン伯爵夫人になることを夢見た。
夢見ているだけならいいが現実は思うようにいかない。何かと理由をつけて伯爵夫人を訪問しては親しい友人関係に持ち込んでいった。エリザベーナは伯爵夫人が虚弱であることを知った。
伯爵夫人さえいなくなればエリザベーナにもチャンスがあると思い込んた。しばらくして、伯爵夫人は体調を崩し亡くなった。元々虚弱な所があったので病死と診断された。誰も不審に思わなかった。
伯爵は中立派の文官。出世欲が無いが生真面目・堅実を絵にかいたような男だった。それに見目よく夜会等で妻をエスコートする姿は、既婚未婚関わらず好ましく思われていた。さらに父とは違う知的な容姿がエリザベーナを虜にした。
しかし、いくらエリザベーナが好意を抱いてもダナトリス伯爵にその気がない。「娘がいるから娘がいなくなれば」と騒ぎだした。エリザベーナは子爵家で半狂乱になった。子爵は父として助言をした。
伯爵の娘を手なずけて母になって欲しいと思わせる。娘が気に入れば伯爵に結婚を進めてくれるかもしれないとほのめかす。
我儘なエリザベーナが病気の伯爵の娘に好かれることなどなかった。愚痴るダイアナート子爵の話にハンナは自分が手助けをすると申し出た。伯爵のお嬢様とエリザベーナの間を取り持つことがハンナの最初のかかわりだった。
エリザベーナに恩を売るのが、ハンナの本来の目的だったが、あまりにエリザベーナは残念なお嬢様だった。伯爵に少しも気にかけてもらえてないことはすぐにわかった。伯爵の娘はエリザベーナには懐かない。ハンナの苛立ちが募る。
ダイアナート子爵はハンナに滋養の薬だと言って小瓶をもたせた。
「ハンナ、娘が嫁がないと結婚できない・・」
そう言って伯爵家にハンナを送り出した。
ハンナはこの薬が滋養の薬だとは思っていない。マーカス医師の薬がとても苦いのでその薬に混ぜて時折飲ませた。突然体調を崩すことはなかった。ダイアナート子爵は毒でなく滋養の薬を持たせてくれたとハンナは安心した。
しかし新しい小瓶を何度かもらい受けるうちに伯爵の娘は起き上がれなくなっていた。そこに服屋のダリアの登場だ。伯爵の娘はダリアに懐き伯爵自身も好意を寄せている。
思い込みの激しいエリザベーナは平民が伯爵夫人になれないと分かっていても、許せない。ダイアナート子爵から伯爵家に婚約の申し込みを再度申し入れた。再婚は考えていないと再度断られた。
エリザベーナは自宅で荒れた。ダリアのせいだ。ベッツのせいだと騒いだ。
「ハンナ お願いね・・・」とエリザベーナに言われた。小瓶の薬が良い薬でないことはハンナは分かった。ハンナは抜け出すことが出来ないなら毒殺だとわからないように投薬し続けた。
かかりつけの藪医者マーカスは気鬱の悪化と思い込んでいる。藪医者は、伯爵夫人の体が弱かったから娘も虚弱体質だと言っていた。
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