エリザベーナ様登場、伯爵の再婚相手?
何度目かの伯爵家の訪問。お嬢様の部屋で侍女二人と4人でお茶をしていた。急に大きな声が部屋の外から聞こえてきた。
「ベッツはいるかしら。ご様子はどう?ベッツ!元気かしら!」
「お嬢様には今お客様が見えています。お待ちください」
部屋の外から大きな声が聞こえる。いつも静かすぎるほどなのに驚いてしまった。
「あら、私は旦那様からベッツの母親代わりと言われているのよ。私に使用人ごときが指図できるのかしら?!」
騒々しい声と共にベッツの部屋のドアを開けようとする。お嬢様はリリとリリのドレスを掴むと布団の中に隠れてしまった。
「あら、病人に誰が押しかけているかと思えば下賤な者かしら?」
「お嬢様のお友達です」
あとから追いかけてきた執事が声を掛ける。
「あらら。私がいるんだから友人が欲しければそれなりの方を紹介しますのに。ダナーは何を遠慮しているのかしら。私がベッツの母と親友でベッツの事託されているのに。こんな叔母さんを娘にあてがうなんて。ダナーとお話ししないといけないわね」
途切れることなく話し続ける。
「ベッツの事をタナーは何も分かっていないんだから。やっぱり母親が必要ね。私に任せてくれればいいのに。私が跡取りを生んで差し上げるのに・・・
あらら・・空気が汚れているわね。窓を開けなさい。気が利かない侍女ね」
ぶつぶつ言いながら、強い香水の香りを振りまく。年の頃なら30前だろう 真っ赤なドレスには、年に似合わないフリルがあちこちに付いている。肉づきの良い体はこれ見よがしに胸の谷間を強調している。
とてもお上品な貴族女性には見えない。お嬢様の部屋のドアを開けても彼女に声を掛けることもない。顔色さえ見ようとしていない。伯爵様とお嬢様を愛称で呼ぶほど親しい関係のようだ。伯爵様は彼女と再婚予定なのかもしれない。もう少しお嬢様を大切にして欲しいね。
お嬢様の部屋から執事が彼女を追い出した。騒がしい女性は部屋を出ていく。何しに来たのか分からない。
「エリザベーナ様テラスでお茶でもいかがですか。ハンナを向かわせますので」
「仕方ないわね」
「申し訳ありません。ダイアナート子爵のエリザベーナお嬢様です。亡くなられた奥様の友人で生前から時々伯爵家に来られています」
執事の声を遮るように侍女のハンナが声をかぶせる。
「お嬢様の病気の事とても気にかけています。お医者様を紹介してくれたの。
とてもやさしいお嬢様です。そんなお嬢様を旦那様も頼りにしています。
ここだけのお話ですけどエリザベーナ様は伯爵様の事が大好きなんです。
伯爵様もきっと・・・ いずれは伯爵夫人かしら」
「あっ!ハンナ!余分なことは言わないように」
執事の慌てた声を上げる。
「そうね、ハンナはエリザベーナ様のご紹介でここに来ているのね」
「そうなのマーカス医師の元で見習いをしていたの。看護ができるからと紹介されました。エリザベーナ様はとてもお優しい方でお嬢様の事とても大切にされています。私にお嬢様の様子をよくお聞きになります。旦那様の心の支えになればと心砕いています。素敵な方です」
「ハンナしゃべっていないでエリザベーナ様のお茶の準備をしなさい」
呆れた執事は、珍しく大きな声を出した。ハンナはよほどエリザベーナ様をしたっているようだ。得意気なハンナの話を聞きつつ お嬢様の様子を見れば布団をかぶったままだった。とても親しいとか、歓迎している様子はない。
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