ベッツイナーお嬢様とうさぎのリリ
ダナトリス伯爵に依頼された寝衣の準備をしているとベッツイナーお嬢様から会いに来て欲しいと手紙が届く。頂いたウサギのぬいぐるみがとても気に入ったようすだった。うさぎさんのお着換え洋服を作って欲しいと書いてあった。
お嬢様の手紙の最後に『あなたに会えて、娘は大変喜んでいます。時間がありましたら会いに来てください』と伯爵が書き添えてあった。リリーとマーガレットたちと作ったぬいぐるみの服から赤いドレスとカチューシャを選ぶ。
お嬢様はリボンが好き。白いリボンを胸周りとスカートの裾に取り付ける。食欲がないがお医者様が薬を出しているので食べ物は持っていけない。乾燥した唇に蜂蜜入りのクリームを持参することにした。手紙がとどいてから5日後ダナトリス伯爵家を訪問した。
伯爵は不在だったが執事のホワイトさんがお嬢様の部屋に案内してくれた。
以前と変わらず顔色は悪い。
「および立てしてすいません。うさぎの名前リリって名前つけたの。リリとおそろいの服が欲しくなってしまったの。我儘言ってすいません」
まだ10歳甘えて我儘を言っても良いのに申し訳なさそうに話しかけてきた。 侍女のマナさんの提案で小さなお茶会を開いてくれた。お嬢様はベッドに上半身を起こしリリを抱きしめてお菓子を少し食べる。無理は出来ないので持参したぬいぐるみの服を出して、一緒にお着換えする。
他 に希望のデザインが無いか話をする。言葉少ないが嬉しそうに好きな色やレースやリボン、リリのバックなど色々話してくれた。久々に楽しそうなお嬢様を見てマナさんは涙ぐんでいた。医師に確認してもらってほしいと、唇の乾燥予防の蜂蜜のクリームを侍女に手渡す。
「また来てくれますか」
お嬢様は、ダリアに小さい声でお願いをする。疲れた様子なのに無理した笑顔する。健気な様子だ。
「また来ますね。今度はリリとおそろいのお洋服を作ってきますね」
ダリアはお嬢様に声を掛ける。執事が玄関まで送ってくれた。
「お嬢様はダリア様がいらしてくれるととても喜びます。伯爵様もできれば遊び相手として通っていただけないかとおっしゃっています。失礼ですが送り迎えとお給金を出しますので時々来ていただけませんか」
帰り際 執事に相談された。
店の方はリリーとマーガレットに任せて、しばらく通うことにした。ダリアは結婚はしたが子供を持つことはなかった。孤児院の子供たちもお嬢様も同じ。まだ手を差し伸べることが必要な子供。
寝具の中に埋もれたお嬢様は、母を亡くした寂しさを乗り越えられず。父親は、娘の辛さより自分の辛さにおぼれて子供を顧みることが出来ていない。
もともと貴族は親子関係希薄なことが多いい。政略結婚が当たり前で夫婦の信頼や愛情が薄い。中には結婚後愛を育む者もいるだろう。夫婦が仲良くない上に愛情が薄い子育ては、次世代に愛情を伝えられないことが多い。
伯爵は娘を愛しているが、それを表現できていない。何かのきっかけがあれば二人が手を取り合う機会があるはずだ。お嬢様の健康と笑顔をまずは取り戻さないといけない。
まずは依頼された服とリリのお洋服を作らないと。いずれはお嬢様に寝衣でなく普通のドレスを作ってあげたいとダリアは思った。
それから、ダリアはお嬢様を訪問するたびに小さなプレゼントを持参した。庭で育てた花を集めてブーケ、リリの絵を刺繍したハンカチはとても喜んだ。
日当たりのいい窓辺で本の読み聞かせをした。歌を歌ったり卓上ゲームや刺繍一緒におこなった。
体調が良ければ庭を執事に抱かれながら一緒に散策をする。テラスでお茶をする。お店のリリーやマーガレットの話をした。孤児院の子供たちの話もした。
依頼された寝衣が出来上がった。柔らかな綿の布で薄ピンクの花染めをした。胸に白いリボンを取り付ける。袖はゆったりとさせて手首のところで絞ってフリルを付けた。長めのワンピースだがおそろいの布でズボンも同じようにセットで作成した。
お嬢様はとても喜んでその場で寝衣を着替えた。ダリアが着替えのために席をはずそうとすると
「そばにいて!」
お嬢様の声がした。手足は細く立つことが出来なかった。いつもなら他人に見せたくないだろうに 手慣れた侍女は寝たままでも着替えさせてくれた。
「とても可愛いやわらくて着やすい。似合う?」
「とても似合っています。リリもおそろいの服に着替えましょうか」
サプライズに作ったお嬢様とお揃いのリリの服を取り出す。嬉しそうにリリの服を目の前に掲げ自分の服と比べてみる。
「リリとお揃い。とっても嬉しい。リリお着換えしましょうね」
いつも侍女にしてもらうばかりのお嬢様は、リリの着替えに手間取っていた。
それでも無理しないように優しくリリのお世話をする。優しい子だと思った。
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