ベッツイナーお嬢様は10歳、病気療養中
「私の娘ベッツイナーは10歳です。2年前に母親を病で亡くした。その頃から娘は気鬱な様子だった。部屋に閉じこもるようになり、最近は食欲がなくなりベッドから起き上がれなくなっている。
医者は心の病だと言って完治は難しいと言われた。
洗礼の儀を受けることも出来なかった。ベッツは大切な娘だ。亡き妻との宝なのだ。私は妻を失った喪失感にさいなまれ仕事に逃げていた。あの子の淋しさに寄り添えなかった。
娘はきれいなドレスを着ることも庭を散歩することもできない。せめて毎日着る寝衣ぐらい可愛いものにしてあげたい。ベッツの喜ぶものを作って欲しい」
切なそうに話す伯爵は一人の父親になっていた。
「お抱えの商会があるのでは?」
「貴族のつながりのある店は使いたくない。ベッツも嫌がるだろう。あまり身構えず孤児院の子供たちに接するようにして欲しい」
母親の様にきめ細かなことが出来ない父親の思いだろう。お土産のぬいぐるみを渡してよいか確認を取る。寝衣見本になりそうなワンピースも広げて伯爵の意向を聞く。
ダナトリス伯爵と面談室を出て静かに廊下を歩く。日中でも静まり返っている。病人一人いるだけで屋敷の中は暗い。奥の部屋の扉が開く。薬臭いにおいが鼻につく。
「ベッツ、今日の体調はどうだい」
伯爵が静かに声を掛ける。ふかふかの布団に隠れてシルバーの髪の女の子が顔を出した。言葉と裏腹に力がない声が聞こえた。
「大丈夫よお父様」
ダナトリス伯爵は、ダリアを紹介してくれたのち侍女とダリアを残して部屋を出た。娘との会話が長続きしない。
「こんにちは、私はダリアと言います。お嬢様のために呼ばれた服屋です。お父様が可愛いお洋服を着て欲しいそうです」
「ベッツは着ていく所がないからいらないわ」
俯き加減に小声が返ってきた。
「ベッツイナー様まずは可愛い寝衣はいかがですか。肌ざわり良い布で作りますよ。見本にワンピースを持ってきました。お揃いでフリル付きのズボンもあると暖かいですよ」
侍女に起こされ背中に大きなクッションをあてがわれる。シルバーの髪は艶もなく肌は青白い唇は乾燥して血がにじんでいる。淡い色が春先の花の様に布団の上に広げられる。細い腕を布団から出して ワンピースを手に取る。
「どれも素敵。寝衣はいつも白色だけだから色がついているだけでドレスみたい」
「お体に負担にならないようにお作りします。さすがにごそごそするので、お花をつけたりは出来ません。ドレスの様にふんわりと広がるようにしましょうか」
長くは話せなかったがベッツイナー様の希望を確認する。退出する前にお土産のうさぎのぬいぐるみを渡す。
「お嬢様このうさぎのぬいぐるみをお友達にしませんか」
「あっ可愛い。良いのですか」
ほんのり頬に赤みが現れた。今日一番の笑顔付きだ。顔合わせの贈り物ですと伝え退出した。執事から納品が決まったら連絡が欲しいと伝えられ馬車で送られた。
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