姉のバイオレットは見目麗しいが性格は天然
私ダリアは小さい頃から冷めた子供だった。黒目、黒髪で 華やかさがない上に可愛げが無い。姉のバイオレットが見た目も仕草も可愛かった。
長女可愛さで、ほって置かれたの。別に放置子ではない。思いっきり手をかけて教育しなかっただけ。
姉は名前通り輝く濃い紫の髪で、瞳が輝く薄菫色 色白の清楚系美人なの。
だから、10歳なるころから、裕福な平民や貴族からの婚姻希望が多く押し寄せていた。15歳になれば貴族の学院に入り、第二王子に目を掛けられるぐらい優秀だった。第二王子には、婚約者がいたんだけど 気に入られたのは仕方がないと姉が呟いた。
「婚約者のいる人に手を出したら、不貞扱いだからね 慰謝料請求されるし 家潰れるよ」
ダリアが呟く。
「だって、私が第二王子を好きで付き合っていないのよ。生徒会の仲間とワイワイしてるだけ」
にっこり微笑む。邪気のない笑顔。それに騙される男どもの多いこと。父のとこに苦情の手紙が来ていることに気が付いていない。
「お姉さま、しっかりして、第二王子の妻なんて大変なのよ。学院は主席は当たり前、淑女教育に加え妃殿下教育に、王家教育が加わるのよ」
「淑女教育に加え妃殿下教育に、王家教育?」
「当たり前じゃない。王太子に何かあったらの第二王子なんだから。それに王太子が王座に就けば、第二王子は、王弟として王を補佐していく仕事がある。他国との社交などは率先して行わないとならない。
他国の行儀作法から歴史、情勢、言葉を使いこなさなければならない。だから、王家の婚約は小さい頃に結ばれ、幼いころから淑女教育行う。他国の事を学ぶ。さらに妃殿下教育を受けるの」
「えっ、無理!今でもやっと中位の成績なのに。複数の言語なんて無理」
「でしょう!それに、王家教育を受けたら何があっても王家から出れないんだよ」
「どうしてよ」
「王家の秘密を知った者を他国に取られたら困るでしょう。隠し通路や国宝の管理、軍事なども他国にもれたら困る。王族になる者を平民にもできない。
良き働きができなければ、病死と言うことで処分される」
「ダリア!怖いこと言うわね。噓でしょ」
「本で読んだことあるから本当だと思う。お姉さまはそんな殺伐としたところより、侯爵か伯爵ぐらいの跡取り息子に、好かれて結婚する方が良いよ。
第二王子大好きでないなら、わざわざいばらの道を歩かなくても良いんじゃない。父は隠してるけど、学院の子息の婚約者の家から苦情の手紙がちらほら舞い込んでるの。しっかりしないと、暴漢に襲われたり、恋の恨みで刺されることもあるからね」
さすがに現実が見えてきた姉は、父に相談した。その結果、辺境伯の逞しいオット・ダイナスター様に守られる事を選んだ。我が家より格上過ぎるがオット・ダイナスター様が姉との婚約を切望した。
辺境伯は、王都に出て社交をすることも少ない。華やかな所が好きな姉には辺境は物足りないが、今と変わらず自由に暮らせるならいいのではないか。
厳しい王家の生活よりも愛されて恋われての結婚は女の幸せと父と相談して決めたようだ。
第二王子を蹴って王都に居る他の貴族との結婚よりは辺境伯の方が穏便に事が進む。厳しい土地の辺境には姉の様なしとやかな女性は珍しい。男所帯に娘ができると辺境伯家は、持参金も婚礼荷物もいらないから、すぐにでも姉に嫁いでほしいと強く望んだ。
姉は、学院卒業と同時に王都で仮の結婚式を挙げ辺境に嫁いでいった。母を亡くした後父が再婚もせず兄、姉、私を育てた。愛娘である姉の結婚に父は、式の間中大泣きだった。さすがに。往復で1か月もかかる距離では、付いていけない。泣く父を説き伏せ私たちは、姉を見送った。
オット・ダイナスター様と護衛騎士に囲まれ 姉は、笑顔で手を振って旅立った。
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