別れと出会い
そんな穏やかな生活が10年ほど続いた。ダリアは35歳になった。実父は亡くなり、実家は兄の代になった。
セバスは、62歳の時神のもとに召された。マーサはその翌年セバスを追うように亡くなった。二人ともその前日までダリアと仕事をしてマーガレットの作った食事を食べた。
いつもの「きれいにな~れ」かけて床に就いた。穏やかな死だった。神殿で弔いの儀式後街の合同墓地に埋葬した。二人とも連絡する身内はいない。ダリアにとって二人は第二の両親だった。
リリアは、18歳で近所の青年と結婚した。その後も店に通って働いてくれている。マーガレットは。家事ばかりでなく刺繍や縫物も上手くなった。街のちゃんとした洋服屋に勤めることを進めたが、ダリアのとこで働きたいと言ってくれた。実は出入りの商会に勤めた孤児院卒の青年と仲が良いようだ。
青年は、読み書き計算が出来る事で見込まれて採用されたようだ。マーガレットは読み書き・計算をマーサやセバスに叩き込まれていた。お休みの時に青年に教えていたようだ。
ダリアはリリアを連れて、今年も孤児院の洗礼の儀の洋服を作るために教会を訪問した。孤児院で子供たちと面会したのち洋服を預かった。その時アリスのおでこに古い傷があった。前髪で隠しいつも俯いていた。孤児院に来る前に暴力を受けていた。
「洋服の先生、私もマーガレットと同じように先生の所で働きたいです。顔に傷があるから卒業しても行くところがない。醜いから娼婦にもなれないって言われた」
胸が詰まる思いだった。
「12歳までに簡単な読み書きと計算の勉強頑張れるかな?」
「勉強しても役に立たない、、、」
「そんなことないよ。読み書き出来れば洋服の型紙や依頼者の希望など記録ができる。計算出来れば、買い物に行っても騙されない。お店の説明も読めるんだよ。何処にも行けないから、うちに来るのは違うと思うよ。
私はね 18歳になっても小さくてがりがりで髪も目も黒くて醜いと言われてたわ。髪の色も目の色もがりがりに痩せているのも私のせいではない。自分のせいでないなら無視すればいい。悩んでも髪も目の色も変わらない。それより違うことで自分の力を身に着けないといけない。
まず顔を上げて、おでこの傷見せなくてもいいからもう少し前髪切ろう。笑顔を作ってごらんアリスは可愛いよ。お化粧で傷を隠すこともできるんだから
おでこの傷で、自分を嫌いにならないで。
「きれいにな~れ」おまじないの言葉。毎日寝る前に言ってみて、そして勇気だして顔を上げて笑ってごらん。私はきれいな鳶色の瞳好きだよ」
ダリアは、俯くアリスの瞳を見つめて話をした。 洗礼式の服が出来上がって マーガレットを連れて神殿に向かった。
「ダリア先生見て!おまじないが効いて傷が薄くなった」
アリスが駆けてきた。
「良かったわね。毎日おまじない唱えたかしら」
「うん、毎日寝ながら小さい声で唱えた。前髪切って傷が見えても気にしないようにしたのお勉強も頑張っています」
俯いてばかりいたアリスの笑顔を見ることが出来た。
「これからも続けてね。もう一度「きれいにな~れ」」
「ありがとうございます」
アリスはお礼を言って孤児院の中に戻っていった。
「アリスに声を掛けていただきありがとうございます。自分で思うほど周りの子供たちは気にしていないが、アリスの心は深く傷ついていました。
洗礼の儀は自分の将来を見つめる機会です。随分動揺していたようです。ダリアさんの言葉で勇気を貰えたようです。
一人一人の子供たちに なかなか向かい合うことが出来ず情けないです」
孤児院のシスター長が声を掛けてきた。
「いいえ、マーガレットの後輩です。良い子に決まっています。こういうことは却って他人の言葉の方が耳を傾けやすいです。あとは、アリスの頑張り次第ですね」
シスター長の優しが子供たちに届くことをダリアは願った。ダリアはアリスが駆け足で去っていった方を見つめた。
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