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【完結】ネガティブ令嬢、今世こそ自分を愛します!  作者: らしか
第3章

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結果通知

王宮文官試験を終えて少しすると、秋が過ぎ、冬が顔を出し始めた。まだ制服のジャケットの上から外套を着るほどではないが、外に出ると寒いと感じるようにはなってきたのだ。


あと1ヶ月もしないうちに、私は16歳の誕生日を迎える。要するに、成人するのだ。

私がこの世界に来てから9年間、普通の貴族令嬢が行うような大規模の誕生会を開くことはなく、家族やセレン様とささやかなお祝いをして過ごしてきた。けれど、今年はそういうわけにはいかない。この国で貴族としての生を受けた以上、1人の大人として認められるためにはそれなりの規模の会を開く必要があるのだ。今までは記憶喪失という設定と成人の年ではないということでなんとか回避してきたわけだが、アカデミーに通ったり、必要最低限ではあるものの社交界に顔を出したりしているので、今年ばかりは諦める他ない。結婚して令嬢から夫人になればそのような会は開く必要がなくなるので、その日1日の我慢だ。



「ララ、少し相談があるんだけどいいかな?」

「…?もちろんですわ、なんでしょう?」

基本的になんでも1人で決断ができるセレン様が私に相談事とは珍しい。

何か重要なことだろうか、と手に持っていたカップをソーサーに戻し、向き直った。


「もうすぐララの誕生日でしょう?今年も例年通りケーキを作ろうと思っているんだけれど、久しぶりに一緒に作るのはどうかと思って」

「ぜひ!セレンとスイーツ作りをするのは楽しくて大好きですから」

魅力的なお誘いに、私のテンションは一気に上がる。セレン様と一緒に調理場に立つことは少なくないが、最近はお互いが忙しいこともあってなかなか機会がない。断る理由など何もないので、すぐに了承の意を伝えた。

それに伴い、何やら準備が必要とのことで、今年のお祝いはカートレッタ侯爵邸で行われることとなった。私のために考えてくださっていることがあるようなので、楽しみに当日を待つとしよう。




「えっ…」

お祖父様やカートレッタ夫妻、国王夫妻まで招待するという信じられない事実に、私は全力で現実逃避をしようとしたが、目の前にある誕生会の招待客リストがそうはさせてくれない。


「ララ様、ご自分の影響力をそろそろ自覚なさってくださいませ」

「それでも納得できないわ…」

「まったく…」

一定の影響力があることは理解しているし、それを利用したこともあるが、国王夫妻を招待するのはやりすぎだと思うのだ。いまさら私がぼやいたところで、どうにかなるわけではないのだが。



リストにため息をついていたその時、私宛てに信書が届いた。薄いクリーム色をした大きめの封筒だ。表には「ベスビアナイト王国 行政部」の文字。深い緑の封蝋は、梟がペンを掴んだデザインのもの。間違いない、試験の結果通知書だ。


近くの侍女にすぐにお父様とお母様、シェルファを呼ぶように伝えて、自分もサロンへと降りる。なんとなく、1人で見るのは嫌だったのだ。受かった喜びも、落ちた悲しみも、家族と一緒に感じたかった。

緊張とプレッシャーであまり良くない出来だったことを思い出して不安になったが、結果はすでにこの手の中にあるのだから今更どうしようもない。封筒をぐっと持ち直してサロンの扉を開きソファに腰掛けた。


落ち着かない様子でいるのを見たヴェラは、私が1番気に入っている白磁にラベンダー色の模様が入っている茶器でダージリンを淹れてくれた。ほうっと息をついているうちにお母様とシェルファがやってきて、遅れてお父様が到着した。進めていた決裁を中断させたらしく、申し訳ない。


家族が揃ったところで、恐る恐る封蝋を剥がして中の紙に手を触れる。

「い、いきますね…?」

全員が頷いたのを確認して、一気に紙を引き出した。

瞬間、私の紫眼が捉えたのは「採用」という2文字。喜びの声が出るよりも先に、視界が滲んだ。


「や、やったぁぁ!」「まぁ!おめでとう!!」「よくやった、自慢の娘だ…」

3人も手を取り合って喜び、その様子を見守っていた使用人たちも祝福の言葉を口にして拍手で称えてくれた。ヴェラに至っては、はらはらと涙を流して、目元をハンカチーフで押さえている。

あたたかい空間の中で喜びを噛み締め、良い家族と使用人に恵まれたことに心の底から感謝した。



その日は屋敷がお祭り騒ぎとなり、急遽晩餐の内容も変更された。いつも料理長が丁寧に作っている料理をより豪華にして、私の好きなものが中心となって並んだ。カボチャのポタージュ、白身魚の香草焼き、チキンのソテー〜完熟トマトのソース添え〜などなど。もちろん、全て適量を。

夜遅くまで家族と談笑して過ごし、部屋に戻った時にはいつもの就寝時間を越えていた。早く寝なければ、美容と健康に悪いとヴェラに注意されてしまうのだが、今日だけは、と思いペンを手に取った。書くのはセレン様への手紙。この週末はお忙しいようで会えないので、結果だけでもお知らせしようと思ったのだ。昂る気持ちを抑えて、要点をわかりやすく書いていく。封筒の裏面に桜のイラストを描いて封蝋で封をし、明日の朝に届けるよう言付けて眠りについた。今日はいい夢を見られる気がする。

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