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【完結】ネガティブ令嬢、今世こそ自分を愛します!  作者: らしか
第3章

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王宮文官採用試験

「ジニア様、近々婚約破棄を申し出てくださいませ」

「えっ、ですが…」

彼女が言いたいことはわかる。婚約破棄をするということは、社交界で泥を被って生きていくということ。新しい婚約者を見つけることも簡単ではない。何より、貴族社会ではあり得ないとされていることだ。


「大丈夫です。相手方の浮気ですし、国王陛下をはじめとした錚々(そうそう)たる方々に証言をしていただけますから、ジニア様が痛手を負うことはありませんわ」

政略的な意図を持って組まれた彼女の婚約は、もとから上手くいっていなかったのだ。義母とのトラブルも、お相手の非礼の数々も、目に余るものだった。


「父と、相談して決めさせてください」

「もちろんですわ。私の父からも説明をしてもらうように頼んでおきますね」

とりあえず、これでこの話は終わりだ。その後、ちらちらと確認をしていると、ルアーラ様が婚約者様とアークライト嬢に声をかけにいっているのが見えたので、きっとセレン様が手を回してくれたのだろうと胸を撫でおろした。






王女殿下とグレシャム様の結婚式から半月。私は行政部の建物内にある一室で、緊張しながら試験問題と睨めっこしていた。国王陛下をはじめとするたくさんの方々に演説をして挑戦することを認めていただいた以上、下手な結果は出せない。たとえ受からなかったとしても、頑張ったと言ってもらえるくらいの点数を。

当然と言っていいのかわからないが、試験会場には私以外に女性はいない。周りの人たちは、何度か試験に挑戦したことがある人も、同じ学年で王立アカデミーに通っている生徒もいる。この人たちの中で、優秀な成績を残せなければ、私の夢が叶うことはない。そう思うとよりプレッシャーが増して、頭がうまく働かなくなるのだった。



「はぁ…」

試験1日目を終え、帰りの馬車の中で大きくため息を吐いた。想定より、数倍難しかったのだ。全2日の日程で行われる試験なので後1日あるわけだが、正直、同じようなレベルの問題が出題されるのなら非常に厳しい戦いになると言わざるを得ない。その事実に、私のため息は意に反して漏れ出てしまうのだった。




「ただいまより2日目の試験を開始します。第1教科は算術です。それでははじめっ!」

号令によって始まった60分の算術試験に挑むべく、問題冊子を開いた。

カリカリとペンが紙を擦る音と冊子が捲られる音だけが響く教室での60分は異常に短く感じた。まるで、早く諦めろとでも言いたいかのように。



「これにて筆記試験は終了です。引き続きグループディスカッションの試験を行います。名前を呼ばれた人から試験会場に移動してください」

次々に名前が呼ばれていく。私の名前はなかなか呼ばれない。元々あまり多くはない受験者がどんどん移動して行って、ついに5人となった。私は最後のグループだったらしい。


移動先の会場は、広い部屋の中心に円卓とそれを囲むように並べられた5脚の椅子、試験官たちが控える長机が置いてあるだけだった。

「ご着席ください。ただいまより最終グループのグループディスカッションを行います」

「時間は15分、お題は、組織のリーダーに求められる要素は何か、です。全員1つは自分の意見を明示し、最終的には自分以外の意見に投票して提出案を決定してください。それでははじめ!」


円卓を囲むように座った私を含め5人の受験生。


「まずはそれぞれの意見を出すところから始めましょうか。自分の意見がまとまった人から挙手してください」

このグループの司会役をすることにしたらしい茶髪の男性はハキハキと話して場をまとめていく。


「はい、僕から発言しても良いですか?」

「もちろんです。どうぞ」

手を上げた男性は、軽く頷いて始める。


「私がリーダーに必要だと思う要素は、カリスマ性だと思います。やはり、この人についていきたい!と思わせる何かがないと、集団を率いることはできないと思うからです」

「なるほど、確かにそうですね」

最初に話し出した男性のおかげで意見を言いやすくなったおかげか、どんどん意見が出揃っていく。


そしてついに、私の番となったのだ。

知らない人しかいないこの空間で発言をすることが、怖くないと言えば嘘になる。それでも、今ここで自分の役割を果たせなければ、間違いなく不合格だ。

「えっ、とまず前提として、皆様の意見に私も賛成の立場であるということをご承知おきくださいませ。その上で私がリーダーに求められる要素だと思うのは、批判に真摯に向き合い、新たな考え方や価値観を理解する努力をするという姿勢です。古よりの伝統や習慣を大切にしつつ、新しいものも尊重できるリーダーに、私はついていきたいと思います…」


1度でも発言を躊躇ってしまえば、私の口は固く閉ざされて2度と開かれることはないだろう、とわかっていた。だからこそ、私は淡々と最後まで言い切ったのだ。


「…わ、かりました。これで全員の意見が出揃ったので、投票をしたいと思います。自分以外の意見で1番いいと思った人を手で示してください。それではどうぞ」


私以外4人の票は私に集まり、提出案は私の意見となって文官試験は幕を閉じた。

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