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【完結】ネガティブ令嬢、今世こそ自分を愛します!  作者: らしか
第3章

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進路

パーティーの帰り、馬車に乗り込んだ私はふうっと長い息を吐いた。最近癖になりつつある。あまり行儀の良いものではないのだが。


「お疲れ様でございました。上手くいきましたか?」

「そうね、最初の一歩としてはなかなか上出来だと思うわ。ここからが本当の勝負だけれど」

「なんだかお顔も生き生きとしていて、とても楽しそうで何よりです」

ヴェラの指摘に、少し恥ずかしいと思いながらも嬉しいとも思う。こんなふうに自分のやりたいことに熱中できる時が来るとは思わなかったから。


帰宅して軽く夕食をとったら、昼間に処理しきれなかった書類に取り掛かる。次の社交は2週間後の休日なので、しばらくはこちらに専念できる。来週あたりに1度、セレン様との時間を作れたら良いのだけれど。そんなことを考えていたら、自然とペンを取って手紙を認めていた。



「最近、とてもお忙しそうになさっていますが、ちゃんとお休みは取っておられますか?いくらクララベル様でも体調を崩したら元も子もないですからね…?」

「心配してくれてありがとう、アドベイラ。大丈夫よ、3食食べているし、睡眠時間もきっちり確保しているわ」

「それなら良いのですが。やっぱり心配になってしまいます」

研究関係の書類をまとめながら伏目がちにそう言うアドベイラは、随分と美少女に育ったものだ。中等部の入学式で初めて会った時から可愛らしい子だと思ってはいたけれど、最近はみんなのお姉さんという雰囲気を纏い始め、男女、学年を問わず人気を集めている。特に平民科の女の子たちからは女神かのように支持されており、アドベイラ様と呼んでいる生徒もいるみたいだ。本人は恥ずかしいからやめて欲しいと照れていたが。


教室の前の方でわいわいと楽しそうに資料作りをしている男子3人組も相変わらずだ。みんな身長が伸びたり声変わりをしたりして大人っぽくなったところ以外はずっと同じだ。


「これは絶対大きく書いたほうがいいって!」

「いや、そんなに大きく書いても意味ないから…」

ジュリオさんとルードラさんのやりとりもそのまま。言い合いをしながらも楽しそうな笑顔で作業を進めている。


「こうやって過ごせるのもあと1年なんですね…」

アカデミーの高等部4年生は、12月を終えるとほとんど登校することはなくなり、卒業後の進路に向けて動き出す。そのままアカデミーに残って研究を続ける人、王宮に勤める人、地元に戻る人、さまざまだが、クラスメイトと顔を合わせる機会はめっきり減ってしまうのだ。


ぼそっと独り言のように呟いたつもりだったが、隣で作業しているアドベイラが聞き取るには十分だったらしい。


「確かにあと1年で卒業してしまいますけど、それっきり会えないというわけでもないですから。そんなに悲しそうな顔をしないでください」

アドベイラは笑ってそう言った。確かにその通りだ。私たちはクラスメイトであり、友達なのだから。



「そういえば、クララベル様は進路、どうされるのですか?やはり、卒業したら花嫁修行ですか?」

「そ、うなるのかしら…まだあまり考えたことがなかったけれど。どんな道に進んだとしても、今手掛けている事業の目標は達成するつもりよ」


セレン様と婚約しているが、いつ結婚するか、という決め事はない。つまりは、成人してから侯爵邸で花嫁修行をしてから結婚するという可能性が1番高い。

本来は、中等部を卒業した時点で花嫁修行を始めるのが通例だが、4年間私の高等部卒業を待っていただいている状況なのだ。カートレッタ侯爵家の皆様には感謝してもしきれない。それでも、自分が始めた事業の責任は自分で取るし、目標を達成するまでは関わることを許していただくつもりだ。


「面白そうな話をしてるね。僕も混ぜてよ」

「…!!」

いきなり肩に手を置かれ、背後から声をかけられたので危うく悲鳴が出るところだった。


「セレン様っ!急に驚かさないでください」

「ごめんね、つい」

あまり反省してなさそうな顔で笑ったセレン様は、私の隣にイスを並べて座った。その様子を見ていたジュリオさんも、何やら楽しそうだと仲間に加わる。


「あの、よかったら休憩がてらルードラさんも…」

「ありがとうございます、そうですね、もう作業は終わりましたし」

5人、円状にイスを並べて、話の続きを始める。


「セレン様はお義父様と同じように騎士団に所属されるんですよね?」

「今の所はそのつもりかな。侯爵家の後継者教育も本格化するから、忙しくなりそうなんだよね…」

セレン様は剣術の腕も確かだし、騎士見習いとして練習に励んでいるメイフェルより強いので、騎士団に所属しても間違いなく活躍することだろう。そして、カートレッタ侯爵家の長男として、次期当主の教育も受けなければならない。まだまだお義父様が現役を退くまで時間はあるので、そこまで焦ることではないのだが。


「やっぱり貴族様は大変ですね…僕なんて地元に帰るか、王都で職につくかのどちらかですよ。家業の牧場経営は兄が継ぐので、後者が現実的ですけど」


「私は地元に戻って職を探します。できればクララベル様の学校で働けたらいいなと思ってはいますけど…」


「僕は医薬の道に進もうかと。幸い学長から推薦状も頂いていますし」 


みんなそれぞれ、志す道がある。私は、どうしたいんだろう。

卒業した後のことなんて、深く考えたことがなかったので、進路も不明確なまま。本当に、カートレッタ侯爵邸で花嫁修行を受ける道でいいのかな。

その日から、私の心の奥底にぼんやりとした悩みが燻り続けることとなった。

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