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【完結】ネガティブ令嬢、今世こそ自分を愛します!  作者: らしか
第2章

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15歳の誕生日

私、クララベル・ロザリンドは15歳の誕生日を迎えた。この世界に来てから約8年と半年が経ち、前世で命を絶った歳に追いついたということだ。

私が転生をした時、天使のリアネン様には「15歳までは命の保障をするわ」と言われた。つまり、この先は事故や病気で命を落としてしまうかもしれないということ。リアネン様に頂いたこの命を無駄にしないよう、より一層気をつけなければ。



「ララ様、お誕生日おめでとうございます!」

「ありがとう、ヴェラ」


「姉様っ!誕生日おめでとう!!はい、僕からのプレゼントだよ〜」

「まぁ、綺麗な花束ね。ありがとう、大事に飾らせてもらうわね」


「誕生日おめでとう。もうララも15歳なのだな…子供の成長は早いものだ」

「そうねぇ…あと1年で成人して、アカデミーも卒業してしまうのね」


朝、目を覚ますと、ヴェラやシェルファ、お父様とお母様、伯爵邸のみんなが私の15歳の誕生日を祝ってくれた。朝食を食べ終えて自室に戻ろうと廊下を歩いていたその時、ふとピアノが目に入った。いつもと同じその場所にいるピアノに、どうして目が引かれたのかは分からない。幸い、アカデミーの時間までまだ余裕があるので、ヴェラは部屋に帰し、少しだけ弾いていくことにした。


いつの日か、セレン様にピアノを披露する約束をしたことがあった。上手くなったら聴いてもらおうと思いながら練習しているうちに、もう何年も経ってしまった。きちんと調律されたピアノは、私の思い通りに歌ってくれる。

当時の私にとって、音楽は友達であり、心の支えだった。音楽以外にも友達が出来て、心の拠り所にすることは少なくなった今でも、こうして触れると安心する。



あの日、私が自分の命を絶った日に弾いていたあの曲。題名はまだなくて、完成していない私だけの曲を弾いてみると、閉じた瞼の裏側に、笑った私が見えた気がした。中学校の制服を着た、あの日の私が。


急に怖くなった私は、ピアノの鍵盤蓋を閉めて自室に戻った。ヴェラには不思議そうな顔をされたけれど、特に何も言われなかった。



「おはようございます、クララベル様。確か今日はお誕生日でしたよね?おめでとうございます!」

「おはよう、アドベイラ。ありがとう」

「もうあと3ヶ月もすれば最高学年になってしまいますね…」

「そうね、時の流れは早いわ、本当に」


私がクララベル・ロザリンドとして過ごした8年半と、いじめに耐えた9年間、ほとんど同じ長さのはずなのに、前世の方がよっぽど長かった気がする。


今朝、感じた漠然とした恐怖。それが消えることはなくて、私の心の奥底で燻っている。仲がいい友達や言葉を交わしたかどうか覚えていないような人に誕生日を祝ってもらい、嬉しいはずなのにどこか喜びきれていない自分がいる。なんなんだろうか、この感情は。

結局、授業に集中できるはずもなく、気がついたら帰宅する時間になっていた。



「…ララ?」

「はいっ!なんでしょうか、セレン様」

「大丈夫?どこか具合でも悪いの?」

大規模な誕生会を開かない代わりに、セレン様が誕生日パーティーをしてくれるのが毎年の恒例となっている。私の自室で開かれるこの会は、私とセレン様だけというとてもささやかなものだが、たくさんの人におめでとうと言われるよりも温かい気持ちになる。


「いえ、大丈夫です。今年もケーキを作ってきてくださったんですよね!開けてもいいですか?」

「もちろん!どうぞ」

銀製のフードカバーを持ち上げると、真っ赤なイチゴで飾られたショートケーキが顔を見せる。去年はガトーショコラ、一昨年はフルーツのロールケーキと言った具合に、毎年私のためにケーキを作ってくださるのだ。


セレン様はナイフで切り分けたケーキをスプーンですくって、私の口の前まで運んでくる。これも毎年恒例の行事だ。

「い、いただきます…んっ!美味しいです!」

「それはよかった。そんなふうに美味しそうに食べてくれたら、頑張って作ったかいがあったよ」


ふわっと花が開くように笑ったセレン様の顔をじっと見つめていたら、もう一口、とケーキを突っ込まれた。


「セレンって、私にスイーツを食べさせるのが好きですよね…どうしてですか?」

「うーん、そうだなぁ…うさぎに餌付けをしているみたいでかわいいから、かな。あとは自分が作ったスイーツを自分の手で食べさせることで、独占欲が満たされている気がするっていうのもあるかもね」

「そ、う、なんですね…」

「元々可愛らしかったのに、最近はどんどん綺麗になって周りの注目を集めてしまっているから。こうして、僕の隣で耳まで真っ赤にしているララを見るのは僕だけにしてくれないと、ね?」


セレン様は、こくりと頷いた私の額に甘い甘いキスを落とした。もう数えられないほどのこのキスに、私は何度でも頬を染める。



その日の夜、窓から眺めた満月はとても綺麗だった。大きくて明るい満月が見守ってくれるなら、いい夢が見られそうだ。

ベッドに入った私は恐る恐る瞼を閉じてみた。今朝のように、笑った私の姿が映らないか怯えたのも杞憂に終わり、深い眠りへと落ちていった。

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