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【完結】ネガティブ令嬢、今世こそ自分を愛します!  作者: らしか
第2章

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流行

今年もやってきた社交始めの時期。この世界に来てから5度目だが、いまだに慣れないし、憂鬱だ。特に今年は、私が高等部に進学したこともあって他の令嬢方と距離を感じるのだ。セレン様は「今のララに手を出せる令嬢なんていないよ?」と言ってくれるのだけれど、不安なものは不安だ。当日はすぐ近くに王女殿下やジニア様がいるので、何かあったらすぐに助けを求めるつもりでいる。


「やっぱりマダムスミスのドレスは美しいですね…お嬢様にもよくお似合いです!」

「なんと言っても今年の流行ですからね!」

入学式の1週間後くらいに伯爵邸で開催したお茶会で言っていた通り、今年の流行は綺麗めなデザインのAラインドレスなんだとか。私はいつも流行に関係なく控えめなAラインを好んで着ているけれど。




半年ぶりの公的な社交の場。王宮の会場にはすでにジニア様が着席していた。私はジニア様の隣、つまり今は空席の王女殿下の隣に座る。今日のジニア様は薄い空色のAラインドレスを身に纏っていて、いつもより大人っぽい印象だ。

「ごきげんよう、ジニア様。今日のドレスも素敵ですね。よくお似合いですわ」

「クララベル様、お久しぶりですわ。ありがとうございます、マダムスミスのお店で仕立てましたの。ですがやはり、本家は格が違いますわ…」

「本家、ですか…?」


私はほとんど社交の場には出ないので、流行のドレスや劇、小説などは分からない。でも、普段から仲良くしてくれるお友達はそんな私に嫌な顔ひとつせずに説明してくれるのだ。

「クララベル様のことですわ。今年のAラインドレスという流行は、クララベル様の素敵なドレスから生まれたものですの。みんなこぞって真似をしていますわよ」


ジニア様はさも当然かのような表情と口ぶりだが、私は全く納得がいかない。私は幻の元完璧令嬢などと呼ばれるほど、ほとんど社交界に顔を出さないのに、そんな私が流行を作るだなんてあり得ない話なのだ。そもそも、全く社交的ではない私なんかのドレスを真似たいと思う令嬢がそんなにたくさんいるはずがない。

よほどあり得ないだろうという顔をしていたのだろう。ジニア様が補足で説明してくれた。


「きっと、クララベル様ご自身の活躍ぶりと、カートレッタ様からの熱い寵愛が相まって尊敬と羨望を集めているのですわね。それは誰だって1度はクララベル様に憧れますわよ。私だってお友達ながら尊敬していますしね」

「そ、うですか…ありがとうございます?」


もはや私の理解の範疇を超えたので、それ以上の脳内処理は諦めることにする。

そんな話をしている間に会場内の席はほとんどが埋まっていた。少し経って王女殿下もお見えになり、殿下の宣言のもとお茶会が始まる。例年通り、席は家の爵位順なので、上座から王女殿下、私、ジニア様で、後にはその他伯爵令嬢が並んでいる。

同世代の伯爵位以上の令嬢だけで20人以上いるので、定まった1つのお題があるわけではなく、ただ単に近くの人たちと話すという感じだ。私は王女殿下とジニア様、2人の伯爵令嬢を加えた5人の輪の中にいて、話を聞いている。そう、聞いているだけ。


「王都に出来た新しいカフェ、もう皆様行かれましたか?」

「新しく始まった劇に登場する俳優が見目麗しいと話題ですのよ!」

「今年は編み込みのハーフアップが流行しそうですわよね」

話題の移り変わりは速い。私も興味がないわけではないが、輪に混ざって盛り上がれるほどではない。


「そういえばわたくし、ロザリンド伯爵令嬢様とカートレッタ侯爵子息様のお話が気になっておりましたの!」

令嬢は、そうだ!と言わんばかりの興味津々な顔で私に話題を振ってきた。話、と言われても、取り立てて何か盛り上がるような話はない。私たちの関係性は安定的で劇的な何かが起こるようなものではないから。


「私たちの話、ですか…?」

「はい、そうです。お2人ともあまりお目にかかれませんから、噂が飛び交っておりますのよ?」

「それに、とても仲がよろしくて令嬢たちの憧れですから!」


どうやら注目されているらしい。私もセレン様もあまり社交の場が好きではないので、必要最低限しか出席していない。そのせいで逆に話題になってしまったみたいだ。

「確かに、カートレッタ様には良くしていただいておりますわ」


あくまで無難に、いつもこう答えるのだ。

「きゃー!羨ましいですわ!わたくしもいつか言ってみたいです」

「そんなふうに愛されるのはやはり人柄でしょうか?」

「カートレッタ様によると、『飾らない姿が1番魅力的』だそうですよ!」


ついに大人しくしていたジニア様まで参加して火に油を注ぎ始めた。

セレン様はなんてことを人様に暴露してくれたんだ!と思いながらも、そんなふうに言ってくれたことが嬉しくて表情が緩んだ。令嬢方がそれを見逃すはずもなく、どんどん加速していく。結局何人かの令嬢も途中参戦してきて、質問攻めにあった。

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