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試験勉強

こちらの世界に来てから約1ヶ月が経ち、やつれていた頬は程よく形が整い、体調も安定してきた。医者の許可も降りたことで、今日から勉強をしようと思っているところだ。


このベスビアナイト王国には、王都に王立アカデミーという日本で言うところの小学校から高校までの教育機関がある。貴族の子供たちは、特別病弱などの理由がない限りは王立アカデミーに通うことが基本だ。男の子は5歳から12歳まで、女の子は9歳から12歳までと決められていて、私とシェルファは来年の4月にアカデミーへ入学する。


私は学校という場所にいい思い出がないから、通いたいとは全く思わない。でも、貴族令嬢が私情で入学拒否なんて前代未聞、言語道断なんだそうだ。仕方がない、伯爵家序列1位のロザリンド家の看板に泥を塗るわけにはいかない。

アカデミーでは入学時にクラス分けの試験があり、貴族科は試験の成績順にS、A、B、Cのクラスに分けられる。ただし、Sクラスは貴族科、平民科問わず試験の上位5人が所属することになる。貴族はともかく、平民がSクラスになった場合、将来が約束されたようなものなんだそう。



勉強の手始めに、屋敷の図書室へ行ってみる。今までも何度か読書をしにきたことがあったが、勉強用の本を探したことはなかった。この国の教育水準は決して高くはなく、きちんと教育を受けた貴族でも、日本の高校生に負けるくらいだ。そもそも、学問自体が確立していないのが原因だと思う。日本で中学生をしていた私にとって、図書室にある勉強用の本では物足りない。仕方がないので、全くわからない王国の歴史や貴族の礼儀作法についての勉強をすることにしよう。元々勉強は苦手ではないし、夢中になっている間は嫌なことを忘れられて楽だった。


「姉様、何を読んでるの?」

シェルファも試験勉強をしに図書室へ来たようだ。シェルファはロザリンド伯爵家の嫡子なので、私よりもかけられる期待が大きい。それを幼いながらに理解しているのか、毎日頑張って勉強をしている姿を見かける。


「ベスビアナイト王国史の本よ。とりあえず勉強を始めるなら建国史からかなぁと思ってね」

「そうなんだね、王国史はこの本がおすすめだよ」

近くの本棚から一冊の本を取り出して渡してくれた。まだ4歳なのにこんなに素晴らしい人格ができていて、勉強する努力も怠らないなんてさすがだと思う。


「ありがとう、シェルファは何を勉強しているの?」

何やら分厚い本を数冊抱えているけれど…


「領地経営学だよ。なかなか難しくて苦戦しているんだけどね」

もしやシェルファは天才では…?いくら貴族の嫡子だと言っても、さすがに早すぎると思う。

「シェルファはすごいのね。私も頑張らなくちゃ!」


「僕なんてまだまだだよ。Sクラスに入るにはもっと頑張って勉強しないといけないから」

シェルファの目標はSクラスに入ること。つまり、クラス分け試験で5位以内の成績を取るということ。私にはそんなに大きな目標はないけれど、シェルファが目標を達成してくれたら私も嬉しい。




「…じょう様、お嬢様!」

耳元で大きな声で呼ばれて覚醒した。図書室の机に突っ伏して寝ていたみたい。もう窓から見える空は暗くなりかけている。起き上がると肩から毛布がずり落ちた。

「おぼっちゃまからだと思いますよ」

いつの間にそんなに紳士みたいなことをしてくれてたんだ。薄々気が付いてはいたけれど、シェルファに対して少しブラコン化してるよね、私。


「本日は旦那様と奥様は夜会へお出かけなので、夕食は各自でとのことでした。いかがなさいますか?」

「あら、そうなの?シェルファはどうするのかしら」


せっかくなら毛布のお礼も言いたいし、シェルファと一緒に夕食をとりたい。前世ではひとりっ子だったから弟という存在にはなれないけれど、1ヶ月でここまでこの世界に慣れることができたのはシェルファの力も大きかったから。


「いつもは自室で簡単に済ませておられますよ。お呼びしてきましょうか?」

「いいえ、それならいいの。勉強しているかもしれないしね。私も部屋で簡単に食べることにするわ」

私も寝てしまった分を取り返すために頑張って勉強しないと!


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