中等部卒業式
「ただいまより、王立アカデミーの卒業式を始めます。まず初めに、国王陛下より式辞のお言葉をいただきます」
国王陛下のありがたいお話を聞いて、進んでいく式をぼんやりと眺める。日本における中学校と同じ役割をする中等部を卒業するということに、実感がないのが原因だ。私は中学校を卒業することなく1度目の人生を終えたため、現実味がないのだ。
入学式と同様に、セレン様が卒業生代表として答辞をしている。入学式の時に感じた、別の世界の住人のような感じはもうしない。私も少しはセレン様に近づけたのだろうか。
そう思ったが、紳士の礼をして拍手に包まれたセレン様の姿を見て、まだまだだと思い直した。私はあんなに堂々と話せないし、拍手に笑顔で対応したりできない。今の私はまだ、セレン様の隣に立つのに相応しい人ではないのだ。
「今日でお前たちの前で話すのも最後だ。長いようで短かったが、みんなの成長ぶりが見られてとても楽しかったぞ!4年間ありがとう!」
グラン先生の熱い挨拶の後、1人ずつ話していく。みんなこのSクラスで過ごした4年間を振り返り、丁寧に言葉を選んでいる。
「素晴らしい仲間と過ごしたこの4年を、僕は一生忘れないと思います。ありがとうございました」
「最初は不安だったアカデミーでの生活も、皆さんのおかげでいい思い出になりました。4年間、本当にありがとうございました」
セレン様のあとに私が続き、ジュリオさん、ルードラさん、アドベイラと進んでいく。もう本当に終わってしまうのだと思うと、視界が滲んだ。こっちの世界に来てから、随分と涙脆くなったみたいだ。
Sクラスで行う最後のHRが終わり、グラン先生からは解散してもいいと言われたけれど、みんな別れを惜しんでなかなか帰れずにいる。もちろん、私もそのうちの1人だ。
「私、4年が経った今でも夢なんじゃないかと疑ってしまう時があるのです。遠く離れた存在のお嬢様とお話しして同じ時間を過ごしているだなんて、考えられないことだったので」
「僕もです。セレン様と仲良くなれたことが奇跡のようで、信じられない時がありますね」
アドベイラやジュリオさんがいう通り、この世界で貴族と平民がこうして会話を交わす機会はほとんどない。分け隔てなく話し、家名ではなく名前を呼ぶことを許すのは、私の知る限り私やセレン様、そしてメイフェルくらいだ。
そういう印象が平民の間で当たり前となっていることは当然だし、決して悪いことではないのだけれど、それだけの理由で分断が進むのは良くない。事実、1つ上の学年ではかなりひどい状態になり、選択科目の授業を分けるという対処を取らざるをえないということになったらしい。私たちの学年は、貴族家筆頭であるセレン様が親平民派だったため、表立っては分断が起こらなかったが。
「もう私たちは仲間であり、友達ですよね?卒業してもずっと」
「ありがとうございます、クララベル様…」
大切な友達の1人であるアドベイラを、卒業したからという理由で疎遠にする気は微塵もない。むしろ、これから先の長い人生を楽しく生きるために仲良くしてほしい。
「あの…水をさすようで申し訳ないのですが…5人とも、高等部もSクラスですよね?」
「それはそうだけどさ!卒業の時はこういう空気になるもんなんだよ!?」
ルードラさんとジュリオさんのコントのようなやり取りもこのSクラスの恒例行事だ。
実は、私たち5人は、先月の中頃にクラス分け試験を受け、無事に王立アカデミー高等部のSクラスへ進学することが決まったのだ。平民である3人は、特待生として学費が免除され、全員一緒に進学できることになったのだ。
「皆さん、高等部でもよろしくお願いしますね」
「もちろん」「こちらこそです!」
私の呼びかけに返事をしてくれたセレン様とアドベイラ。首を縦に振って同意したルードラさんとジュリオさん。このメンバーなら、2度の人生で未到の高等部を平穏に過ごせると思える。
これにて第1章完結です。ここまでお付き合いいただきありがとうございました!
ララの成長譚はまだまだ続きます。今後も引き続きよろしくお願いします!
第1章の完結を記念して、SSを投稿する予定です。砂糖多めでお送りできるように頑張りますので、ぜひご一読ください。




