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【完結】ネガティブ令嬢、今世こそ自分を愛します!  作者: らしか
第1章

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表面

「すみません、少しお時間よろしいでしょうか?」

「ロザリンド様、お久しぶりでございます。何か私にご用でしょうか?」


長い栗毛のポニーテールを揺らして振り返った彼女は、何度見ても惚れ惚れするほど綺麗な紳士の礼をした。

「先ほどはありがとうございました。そして、私の友人を助けてくれたのはあなただったのですね」


マリンテリア様の話によると、セレン様の誕生会で私の銀髪を見て正体に気づいたそうだ。しかし、お忍びで街に出ていた時の話を社交の場でするわけにもいかず、かと言ってそれ以外に交流もないので、話す機会がなかったということらしい。

「ご友人はあの後何事もなかったのでしょうか?」

「えぇ、マリンテリア様のおかげで、怪我もなく帰宅することができましたわ。先ほどの件も含めて、改めてお礼を申し上げます」


私は深々と頭を下げたが、慌てた様子で止められた。

「先ほどの件は、止めに入って当然です。それに個人的な事情もありましたので…」

「個人的な事情、ですか?」


「ご存じありませんか?私は女のくせに剣術を学ぶ異端だと、社交界では有名なのです。ですから、先ほどのような陰口は看過できないというわけです」


あまり社交界に出ることがないので知らない話だったが、確かに貴族令嬢が公的な場で紳士の礼をしたり、剣術を学ぶことは目立つかもしれない。私は誰が何をしようと、他人に迷惑をかけなければそれでいいと思うけれど、それは日本からの転生者ゆえの考え方だ。ここは日本とは全く違う世界で、貴族という責任を伴う立場なのだ。考え方も、常識も全然違う。残念ながら、そう簡単に理解されることはないはずだ。


「そうでしたか。私は剣術も、紳士の礼もとても素晴らしいと思いましたわ。性別や見た目など、自分の努力ではどうしようもないことを揶揄するのはあまり気持ちのいいことではありませんしね」

「…ロザリンド様は、変だと思われないのですか?」


「ええ、もちろんです。ご自分の信念を貫いておられる姿はかっこいいですから」

マリンテリア様は心底不思議そうな顔をして、「お褒めにあずかり光栄です」と礼をして、茶会の会場へと戻っていった。私も少し間をおいてから戻る。



「おかえりなさい、ララ」

「ただいま戻りました」

元の席に着いた私は、再びみんなの話に耳を傾ける。どうやら話題はアカデミーのことへと移ったみたいだ。


「最近、貴族科と平民科の分断が進んでいますわね。1年生はどうですか?」

「今のところはまだ。ですが時間の問題かと…」

2年生の選択科目の授業では、完全に貴平が分断され、貴族たちの横暴な態度が問題になっているらしい。形式上、貴平を問わず、ともに学ぶことを掲げているアカデミーとしては然るべき対処をするべきなのだが、現実はそう甘くない。貴族と平民の間には大きな認識の差があり、埋めようがないそうだ。


「そもそも貴族科と平民科が分かれていますし、アカデミー以外で関わる機会がないので仕方がないことのような気もしますが」

「だからと言って授業を完全に分けてしまえば、より分断は進む一方ですよね」


その後も議論は大きく進展せず、貴族側は横暴な態度を改めるべきだという結論で幕を下ろした。どうにかできないのだろうか…



茶会がお開きとなり、王女殿下にご挨拶をしてから馬車に乗って伯爵邸に帰る。セレン様のお迎えが伯爵邸に来る予定になっているので、一緒に乗り込んだ。

「今日はお疲れ様でした。控え室から帰ってきた後、様子がおかしかったような気がしたのですが、僕の気のせいですか?」


どうやらセレン様には隠し事ができないようだ。

「少し疲れてしまっただけですわ。ご心配をおかけして申し訳ありません」

「そうですか?伯爵邸に着いたらゆっくり休んでくださいね」


そんなに表に出ていただろうか。ヴェラにはバレなかったのに。

「わかりました。お気遣いありがとうございます」


こんな風に心配してくれるセレン様のことを、見た目だけで判断してしまう人たちのことを残念に思う。私に対してだけではなくて、貴平問わずフレンドリーなとてもいい人なのに。

私も前世で自分の努力ではどうにもならないことを理由にいじめられていたから少しくらいは気持ちがわかる。見た目や声、身分などだけを見て、その一歩内側を見てもらえないのはとても苦しいことだ。上っ面だけがその人を判断する材料ではないのに。



「ララ?」

つい考え込んでしまっていたみたいだ。すみません、と笑い、綺麗な黒髪に手を伸ばした。すっと指先が通って、セレン様の赤い瞳が見開いているのがわかる。

「い、いきなり触れてしまってすみません!綺麗だったので…」


セレン様は何も言わず、両手で顔を隠した。「逆効果ですよ」と借りを返してからかってみたら、キッと睨まれた。恥ずかしさと少しの恨みがこもったその視線に、思わず笑ってしまう。

私はセレン様に好きだと伝えてから、良くも悪くも容赦なくなったと思う。今までセレン様から受けてきた甘い仕打ちをやり返してやろうと。

普段は絶対に見られない貴重なセレン様の表情を眺めながら、伯爵邸までの短い時間を過ごした。

今話の終盤、ついにララまでデレ始めましたが、作者の予定にはなかったエピソードです。

勝手にララが動いた結果なので、セレンから文句が出ても知りません…!

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