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【完結】ネガティブ令嬢、今世こそ自分を愛します!  作者: らしか
第1章

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キャラメル

ひととおり「教育改革大作戦」が落ち着いた秋口。私は2回の人生で初めて友達と遊びに行くことになった。相手はアドベイラ。私がセレン様以外で唯一、仲の良い友達と呼べる人だ。


「最近話題のカフェへ一緒に行きませんか?」と誘ってもらった時、なんとも言えない嬉しさが込み上げてきた。同時に、学校以外でどんなことを話せばいいのか分からないことが少し怖いと思ってしまった。



そして当日、アカデミーの前で待ち合わせをした。アドベイラはアカデミーの学生寮で暮らしているからだ。今日は馬車も使わない予定なので、貴族だとバレないように服装や髪型に気を使った。2つのみつあみにした銀髪が目立つので、意味があるかは微妙なところだけれど。


「お待たせ致しました。さぁ、行きましょう!」

アドベイラに手を引かれて歩いた王都の街は、セレン様と歩く時とはまた違った景色に見える。


「えっと…本名でお呼びしたら変装の意味が無いですよね。なんとお呼びしたらいいですか?」

「そうですわね…カノン、と呼んでくださいませ」

カノンは前世の名前だ。私がクララベル以外に自分のことだと認識できる唯一の名前。


「分かりました、身バレ防止のため敬称は簡略化させていただきますね」

アドベイラからすれば、私は領主の娘で、お嬢様という遠い存在なんだろう。そんなに丁寧な応対をしてもらわなくてもいいのにと思うけれど。


「カフェの開店まで少し時間があるので、近くを歩きながらショッピングしませんか?」

「もちろん!」


カフェは14時開店だ。それまで、雑貨屋や既製服のお店などを見ながら歩いて、気に入ったものがあれば購入して過ごした。アドベイラは、白いカチューシャを購入し、早速身につけている。綺麗な赤毛に真っ白なカチューシャが映えて、とてもよく似合っていると思う。

ちなみに私は押し花の栞を買った。本を読むのが好きで、アカデミーに通いながら事業を手にかけて忙しかった最近でも、1ヶ月に10冊ほど読んだくらいだ。今まではずっと小さい頃から持っている栞を使っていたけれど、そろそろ買い替え時だ。


1時間半ほど経って、開店時間が迫ってきたので目的のカフェへ向かう。人気店のため、少し早めに並ばないとすぐに長蛇の列になってしまうのだ。

「カノンさんは変装をしても気品を隠しきれていませんよね…」

「えっ、本当ですか?」


てっきり完璧な街娘に擬態していると思っていた。セレン様と街へ出ている時も周りからそんな風に見られているのだろうか。確かに変装しているセレン様はいいところのおぼっちゃま程度に見えてしまうけれど。

「さすが我が領自慢のお嬢様です」

誇るところじゃないと思うけれど、アドベイラが笑顔なのでよしとする。


開店と同時に席に着くことができ、先にアッサムのミルクティーを頼んでから一緒にメニュー表を眺める。1番人気の季節のフルーツタルトはもちろんのこと、気になるスイーツがたくさんありすぎて選びきれない。じっくり吟味した結果、私はキャラメルのパウンドケーキ、アドベイラはフォンダンショコラを注文した。持ち帰りで季節のフルーツタルトを2つ頼むのも忘れずに。


ケーキよりも早くテーブルに届いた紅茶を飲みながら、会話に花を咲かせる。話題はもっぱら、アドベイラの恋バナだ。Sクラスに所属するほど頭がよく、ふんわりとした雰囲気の彼女は、平民科の男子生徒から女神かのように崇拝されている。ただ、高嶺の花と化してしまったゆえに誰も声をかけられずにいるんだとか。

「私は平民ですから、カノンさんのように早くから婚約をすることは珍しいです。それに私自身があまり恋愛に興味がないのです。学業に勤しむ私を本当に好いてくれる方を見つけるのは難しいですしね」


確かに、平民が所属すれば将来安泰と言われるSクラスに、きちんとした教育を受けられなかったアドベイラが所属しているのは異例中の異例だ。それに彼女はこの世界で理想とされる淑やかな妻ではなく、学業を修めて自らの足で立とうとする強い女の子だ。そんなアドベイラを理解し、支えられるようなパートナーを見つけるのは簡単ではないと思う。


「アドベイラはこんな私にも優しく接してくれる素敵な女の子なのだから、きっといい方にで会えるはずですわ」

「カノンさんに言っていただけたら心強いですね、ありがとうございます!…さぁ、ケーキも届いたことですし、いただきましょう」


友達と過ごす時間がこんなに楽しいとは知らなかった。家族や婚約者と過ごす時間とは違ったかけがえのなさがある。前世でもこんな友達がいればどんなによかったか。




カフェを出る頃にはもう日が傾いていた。随分と長い間話し込んでいたみたいだ。フルーツタルトを片手にアカデミーの方へ歩いていたその時、背後から声をかけられた。

「お嬢さんたち、これから暇?」と。

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