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【完結】ネガティブ令嬢、今世こそ自分を愛します!  作者: らしか
第1章

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教育改革大作戦①

「ロザリンド、今日の放課後、学長室へ行くように。学長からの呼び出しだ」

お茶会の翌々日、いつも通りの日常が先生の一言によって一変した。その後の授業はほとんど集中できず、放課後になってすぐ、学長室の扉を叩いた。


「クララベル・ロザリンドです」

「入りなさい」

「し、失礼致します」


初めて足を踏み入れた学長室はお父様の執務室に似た空間で、執務机とテーブルセットが置かれ、部屋の両壁は本棚に本がびっしりだ。学長は入学式の時に前で挨拶しているのを見たくらいで、それ以外に面識はない。なぜ自分が呼び出されたのかわからないまま、勧められたソファに腰を下ろした。


「今日来てもらったのは他でもない、君の事業の話だ」

私の事業?一体なんのことやら…


「君のお父上から相談を受けてね、詳しい話は本人から聞こうと思ったのだよ」

私と学長の間に置かれたテーブルの上には、お父様の字で書かれた書類の束。内容を読んでみると、ロザリンド伯爵領の教育制度改革についてのものだった。それなら心当たりがある。1週間ほど前、私からお父様にお願いしたことに関するものだからだ。




『お父様、私から少しご相談があるのですが、お時間よろしいでしょうか?』

『あぁ、構わない。珍しいな、ララがここに来るなんて』

普段はあまり近づかない、お父様の執務室を訪ねた私は、ある提案をしようとしていた。


『少し前から気になっていたのですが、ロザリンド伯爵領の識字率はどれくらいでしょうか?』

『識字率?…そうだな、1割から2割というところだと思うが。それがどうした?』

アカデミーに通い始めて気がついたこと、それは平民の識字率がとても低いということだ。アカデミーに通うような平民は、親がアカデミー出身だったり、周りに勉強を教えてくれる大人がいたりするような、比較的環境に恵まれた子達だ。当然、そんな子は多くない。そのため、字が読めない人たちは、その子孫までもが識字を必要としない職に就く。そんなことでは一向に経済が発展しないと、どうして今まで誰も気が付かなかったんだろう。


『平民に教育を施せる学校を作りたいのです』

『いきなりどうした。教師の給料や建物の造設の資金はどこから出すつもりだ?』


『だからこそ、お父様に投資していただけないか交渉しに来たのですわ』

『簡単には出せないぞ。領民の血税だからな』


もちろん、この展開は予想済みだ。私だって、どうすればいいのかよく考えてからここに来たのだから。


『領民が教育を受ければ、今よりももっといい職につけます。その結果、領は栄え税収も上がる。そして、学校を作ることでそこで働く大人たちの雇用も一定数見込めます。どうでしょう、将来への投資、していただけませんか?』

『そうだな、いいだろう。後のことは私に任せなさい。計画書が出来上がったらララに見せるとしよう』

『ありがとうございます、お父様!』



私からの話を聞いたお父様は、早速計画を立てた。しかし、平民に対して1から教育をするのは貴族領初の試みで、ノウハウをアカデミーに教えてもらおうとしたそうだ。まわり回って、学長が私に詳しい説明を聞こうとしたというわけ。ここまで説明をしてようやく、ずっと黙っていた学長が口を開いた。


「なるほど…君も随分と大胆なことを考えたもんだ。なかなか面白い、もちろん協力させてもらおう。こちらとしても利はあるからな」

「将来のアカデミー生候補、ですか?」

「さすがよく頭が回る。そうだ、将来の有望な人材育成に一役かってくれそうだ」



学長室を後にした私は、教室で待ってくれていたSクラスのみんなに事のあらましを話した。特にアドベイラからの反応が良かった。彼女自身がロザリンド伯爵領出身だからだろう。

「私、アカデミーを卒業したら、働きながら子供たちに字を教えたいと思っていたのです。ありがとうございます、クララベル様!」


そんなに喜んで貰えたら、私も頑張って考えたかいがあった。あとは長い目で見て利益が出るかどうか。もしもロザリンド領で上手く行けば、他領も取り入れるだろう。そうすれば、この国全体の識字率が上がり、より文明も発達するはずだ。


「その事業いいですね…ララ、このアイデアの使用申請は伯爵様にすればいいのですか?」

「そうですね、実際に計画や予算の捻出などは父が行っていますので」

どうやら早速セレン様が興味を持ってくれたみたいだ。もしも本当にカートレッタ侯爵領でもこの事業が始まったら、真似をする家門も増えるだろう。



学長室に呼び出された3日後、今度はお父様の執務室に呼ばれた。なんと、たった3日でアカデミーからの支援が決まったそうだ。王立ゆえ、国王陛下の承認が必要なはずなのに、異常な速さだ。


「ララが記憶を失った時には将来を心配したが、アカデミーもSクラスで、こうして自領のために考えが及ぶならもう大丈夫だな」

「私などまだまだですわ。お褒めの言葉は、事業が成功した時まで取っておいて下さいませ」



それから半年間、私はアカデミーの授業と両立しながら、「ロザリンド伯爵領の教育改革大作戦」の準備に奔走した。セレン様やシェルファ、ヴェラは無理しすぎないようにと言われているけれど、最近はきちんと3食食べているし、睡眠も十分取っているので心配ない。気持ちだけありがたく貰っておこう。


校舎は豪華すぎない、街に馴染むものを建てた。敷居が高いという印象を与えたくなかったからだ。

そしてセレン様にお願いして、簡単に作れるスイーツをいくつか教えてもらった。人を雇ってそれを作ってもらい、授業後に振る舞う予定になっている。スイーツ目当てで勉強しに来てくれる子も一定数いるはずという私の作戦のひとつだ。

ヴェラたち使用人に情報を意図的に回してもらい、手回しは全て行った。私も机を並べるなど、開校の準備を手伝い、ついに当日を迎えた。

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