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抱えきれない

連載小説になります。

今回の話は少し重めですが、気軽に読んでいただければと思います。

(自殺、ネガティブが苦手な方はお気をつけください)

「きゃぁぁぁぁ!」

「だ、誰か、救急車!」


なんのために生きてきたんだっけ。お父さん、お母さん、こんな娘でごめんなさい。

でも、もう耐えられそうになかったんだ。心が壊れて、身体中にモヤモヤとした黒い感情が広がっていく毎日が辛かった。クラスメイトからの鋭い視線が痛かった。


もう、限界だった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私は最後に1曲だけ、そう思いそっとピアノの鍵盤に触れた。たった1人、私だけが知るこの曲を弾くと、苦しい記憶ばかりが蘇ってくる。




一般の市立小学校に通っていた私は、内気な性格と少し変わった声のせいでいじめられるようになった。

「そんな声で恥ずかしくねーの?」

「話しかけないでくれる? お前の声聞くと気分悪くなるわぁ」

この程度の悪口から始まり、6年生になる頃には上靴を隠されたり消しカスをかけられたりすることが日常と化していた。

もはや何も感じなくなって、狂ったのが世界か私かなのかさえ、わからなくなってしまった。


少しでもバカにされないよう勉強だけは怠らなかった私にとって、中学受験ほど彼らから逃げる大きなチャンスはなかった。必死の勉強は功を奏し、無事合格を勝ち取った。ただそれは、自分の首をより締める行為だった。


名の知れた進学校であるこの中学校は、一学年のうち7割が附属小学校からの持ち上がり組という特殊な学校。通学する生徒は将来が有望なエリートたち。その中で、闘争心が弱く外進組の私はかなり目立つ存在になってしまい、結局は小学校の二の舞になってしまったのだ。


「周りに相談すればよかったのに」

簡単にそう言える人はたいそう幸せな人生を送ってきたのだろう。毎日自分を守ることに必死な私の心に、そんな余裕なんてあるわけなかった。

気がついたら、雪混じりの風が吹く日、日々のいじめをつづった日記を手に大好きだった音楽室へと足を向けていた。




弾き終わった私は、窓枠に足をかけて飛び降りた。私がいなくなった音楽室には日記とリズムを刻むメトロノームだけが残った。



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