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【完結】ネガティブ令嬢、今世こそ自分を愛します!  作者: らしか
第1章

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中等部入学式

試験結果の発表から1ヶ月が経ち、とうとう入学式当日を迎えた。

この1ヶ月間、制服の採寸や宿題をこなし、初等部を修了したセレン様と一緒に街へ出かけることも多かった。庶民的なカフェに行ったり、緑地で散歩したり。



昨日は緊張と不安であまり眠れなかった。学校にトラウマがある私にとってこんなに怖いことはない。鏡の前で笑顔の練習をしてみても、どこかひきつっていて不自然な印象が残る。これから4年間、絶対に逃げられないアカデミーで平穏に過ごせるかな…


「髪はハーフアップで、このリボンをつけましょうか」

「全部ヴェラに任せるわ。センスはとてもじゃないけど敵わないもの」


中等部の制服を身に纏い、シェルファと一緒に馬車でアカデミーに向かう。20分をこんなに怯えながら過ごしたのは初めて。異常に早く感じ、全身の震えと寒気が止まらない。前世で学校に通っていた頃と同じだ。


「姉様、顔色が悪いよ。気分悪くなっちゃった?大丈夫?」

「え、ええ、大丈夫よ。心配しないで」

「姉様がそういうならいいんだけど…」

こんな状態じゃ変に目立ってしまう。貴族令嬢らしく、堂々と胸を張って歩かないと…



「お名前は…クララベル・ロザリンドさんですね。先生がおられるので、指示に沿って進んでください。ご入学、おめでとうございます!」

受付で案内役の先輩の話を聞き、そのまま大きなホールの席についた。まだ早かったみたいで、周りには自分以外誰もいない。クラスごとに集められているので、近くにセレン様がくるはずなんだけど。



「お隣、失礼します」

ぼーっとステージの方を眺めていると、隣の席に男の子が座った。少し北部の血筋を感じる、色白で茶色い髪と瞳。いきなり声をかけられてびっくりしてしまい、咄嗟に声が出なかった。無視をしたみたいになるのは避けたいので、軽く会釈だけしておく。


その後もぞくぞくと席が埋まっていき、定刻通りに入学式が始まった。どうやら席は成績順のようで、左隣にはセレン様、右隣にはさっきの男の子。さらに、見慣れない顔立ちの男の子と、赤毛が印象的なかわいらしい女の子が続いた。

粛々と進められる入学式の途中、セレン様が新入生代表挨拶をしたり、国王陛下からお祝いの言葉を頂いたりした。新入生のみならず、来賓の方、一部の在校生の注目を集めて挨拶を完璧にこなしたセレン様は、いつも私に向ける顔とは全然違い、貴族然としていた。そんなセレン様は、私とは遠い存在のように感じた。




長い入学式を終え、各クラスに分かれて教室へ入る。たった5人のクラスとはいえ、教室のドアをくぐった時にはさすがに緊張した。席につき、落ち着かなくて拳に力が入る。


「ララ、手の力抜いて?そんなに緊張しなくても大丈夫です。ここにいるみんなはララの敵ではありませんから」

気がついたセレン様に小声で注意されてしまった。そうだ、私には前世と違ってセレン様という味方がいるし、声だって変わった。今はこれからのアカデミーで平穏に過ごすことだけを考えよう。



「よし、全員揃ったな。さっきの担任紹介で挨拶をしたが、改めて。このSクラスの担任を務めることになったグラン・リアミートだ。気軽にグラン先生と呼んでくれて構わない。そしてこっちが副担任のアリア先生だ。1年間よろしくな!」

グラン先生は前世でいうところの体育会系の先生で、背後に燃える炎が見える気がする。気がするだけだけど。


「Sクラスは貴族と平民が一緒に学ぶ、アカデミー内唯一のクラス。くれぐれも問題は起こさないように頼むぞ」


その後、生徒たちの自己紹介をする流れになる。まだ家族やヴェラたち、セレン様以外の人とほとんど話したことがないのにハードルが高い。

「セレン・カートレッタと申します。カートレッタ侯爵家から来ました。よろしくお願いします」


そうこうしているうちにセレン様の自己紹介が終わり、私の番になる。セレン様は紳士の礼をしていなかったので、私も淑女の礼をする必要はない。みんなの方を向いて、名前と一言言えばいいだけ。それだけ。


「え、と…ク、クララベル・ロザリンドです。よろしくお願いします…」

クラスメイトと先生の視線を一身に受ける。心臓の音が脳に響いて、自分の声と重なって聞こえた。


私に続いて残り3人が自己紹介をしているけれど、頭が熱くてまともに聞いていられない。落ち着いた頃には先生が話し終えて、今日は解散ということになっていた。

「お疲れ様でした。多分耳に入っていなかったと思うので、これをどうぞ」


セレン様は3人の自己紹介をメモしてくれていたらしい。集中できていないのを見られていたんだ。

「あ、すみません…ありがとうございます、助かりました」


私のセレン様以外のクラスメイトは全員平民出身で、3席の男の子は北部のアルボネ辺境伯領出身で名前はジュリオ、家は牧場を経営しているそう。4席の男の子は、隣国ベイリャル出身で、名前はルードラ。最後の5席の女の子はなんと我が領、ロザリンド伯爵領出身のアドベイラ。



「挨拶も終わったことですし、今日のところは帰りましょうか」

セレン様に車止めまで送ってもらい、馬車の中で待っていたシェルファと一緒に帰路に着く。

初日からこの調子でこれからの学生生活が不安すぎる。ぐるぐると今日の出来事が頭の中を回って、ベッドに横になってもなかなか寝付けない。明日、行きたくないという思いと、休んだら色々な人に迷惑をかけてしまうという思いが浮かんでは消えていく。


長い夜を越えて、また新しい朝を迎えた。

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