決意
疲れが溜まっていたのか、目を覚ますともう太陽がかなり高くなっていた。いつもの時間に起こされなかったのはヴェラの気遣いだろう。
廊下に出て近くにいたメイドに声をかけると、すぐにヴェラを呼んできてくれた。着替えは1人で出来るけれど、メイクと髪はどうにもならない。ヴェラは手際良く私の身なりを整え、1通の手紙を差し出した。
大きな鷲と剣のこの家紋はカートレッタ侯爵家のものだ。内容は今日の午後、伯爵邸で試験結果を共有しようというもの。まだ時間はあるので、ゆっくり準備をしよう。
とりあえず朝食兼昼食をとり、お茶とスイーツを選ぶ。これは本来侍女の仕事だけど、セレン様がお越しになる時だけ自分で選んでいる。今日はカモミールティーとディアマンクッキーにした。セレン様がスイーツを持ってきてくれることが多いので、いつもクッキーなど手軽なものになる。もちろん、他にも用意はされている。
準備を終えたので、自室のソファで読書をして時間を潰す。味見に飲んだカモミールティーが効いたのか、うとうとし始めてしまった。セレン様が到着したらヴェラか他の侍女が呼びにきてくれるだろう。安心して眠りに落ちていった。
ふわふわと頭を触られている感覚。どれくらい時間が経ったんだろう、かなり寝ていた気がするけど…
「起こしてしまいましたか、残念」
瞬間、目の前でセレン様の笑顔が咲いた。正確には、頭上で。
「えっ…セレン様?」
「よほど疲れていたんですね、僕が触れていても気が付かないなんて」
起き上がって気がついた。いつの間にかセレン様に膝枕をされていたことに…
「顔、真っ赤ですよ?そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに」
こんなことをしておいて、恥ずかしがるなという方が無理な話。
「い、いつからですか…?」
「30分前くらいですね。ララの髪はサラサラで触り心地が良くてずっと触っていられました」
「な、んっ…今度からは寝ていたら起こしてくださいよ、約束ですからね…」
セレン様の前では、素の自分でいられる気がする。それはきっと、セレン様が纏う優しくて温かいオーラのおかげ。確かに、この人なら大丈夫だと思う何かがある。
「あまりにも可愛いので約束は出来かねます」
その後、ヴェラがティーセットを運んできてくれて、今日の本題に入った。結果、2人とも同じSクラスで、セレン様はまさかの首席だと言う。
「セレン様が首席だったのですね、さすがですわ」
「そういうララこそ、あまり自信がないと言っていたのに次席ですか。調子が良かったら逆転されてましたね」
私にとって、首席かどうかは関係ない。セレン様と同じクラスになれたことが、ただただ嬉しい。それに、Sクラスに入ったことで、今まで心配をかけてきた家族やヴェラたちにも少しは安心してもらえると思うし、試験の日のような貴族達も減るだろう。
「正直、アカデミーに行くのがとても怖いのです。でも、セレン様と同じクラスというだけで少し安心できますわ」
「何かあったらいつでも頼ってくださいね?迷惑だとか、絶対に思いませんから」
「ありがとうございます、なんとか頑張りますわ」
いよいよ、来月はアカデミー中等部の入学式だ。前世で死を選んだ原因の学校生活が、ついに始まる。今世はすでにセレン様という味方と、温かく見守ってくれる家族がいる。だから、絶対に前世と同じ結果にはしない。
私は、今世こそ自分を愛して幸せに生きると決めたのだから。




