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【完結】ネガティブ令嬢、今世こそ自分を愛します!  作者: らしか
第3章

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本編完結記念SS④【ジニアとエビネの物語】

ジニア視点とエビネ視点で迷いましたが、今話はエビネ視点で進行します。

SSなのに長いのはいつものことなのでお許しください…

ベスビアナイト王国第1王女殿下とグレシャム公爵家嫡男の結婚式はつつがなく終了し、パーティーも和やかな雰囲気のもと、過ぎると思っていた。


「ルアーラ様、セレン様をお借りしてもよろしいでしょうか?」

「あぁ、ロザリンド様ですか。もちろんですよ、セレン、奥様がお呼びですよ」

「エビネ、ララはまだ妻じゃない」

「まだ、ねぇ〜」

「何か?」

「いーや?ここは僕が繋げておくから行って来なよ。奥様は切迫詰まっているようだし」

「言われなくともわかっている」

ロザリンド様、友人であるセレンの婚約者で、アカデミーでは僕の警護対象だ。何やらセレンに急用があるらしく、表情からその緊急性が窺える。

少しセレンを揶揄いすぎてしまったが、いつも僕を揶揄ってくるのはセレンの方なので反省はしていない。僕は適当にこの場を繋ぎ、ゆっくりと飲み物でも飲んでいようと思った。


しかし、会場後方、怪しい動きをする2人組が視界に入った。普段から剣術の稽古をし、いざという時はロザリンド様をお守りできるように気を張っている僕は、ちょっとした気配に敏感なのだ。あちらに気づかれないよう、グラスを傾けながら横目で様子を窺う。若い、仲良さげな男女で、女が男の腕に自分の腕を絡めている。なんだ、ただのカップルか、どうして自分は怪しいと思ったのか、と思っていたその時、男の顔に見覚えがあることに気がついた。ブランカ伯爵令嬢の婚約者だ。正直、名前までは覚えていないが、隣の女は最近の社交界を賑わせていると噂のアークライト男爵令嬢。

ぱっとブランカ嬢の方を見ると、今にも涙が溢れてしまいそうな、悲痛な表情をしていた。声をかけに行こうか、でも自分にできることは何もない、と迷っていたら、テーブルにロザリンド様が戻ってきた。きっとロザリンド様なら全ての状況を把握していることだろう。僕は少し安心して、今日のところはロザリンド様にお任せすることにした。



それから数日間、ブランカ嬢は社交界に姿を見せなかった。ほぼ全てのパーティーに参加する社交界の華と呼ばれる彼女がいないだけで、会場の空気はいつもと全然違う。

セレンとロザリンド様はそれぞれ騎士団入団試験と王宮文官試験の準備で忙しい。それをブランカ嬢もわかっているだろうから、助けを求めにくいだろう。それならばせめて、力は遠く及ばないけれど僕が…

その日は途中で夜会を抜け、屋敷に帰ってすぐに手紙を認めた。今まで、招待状以外をブランカ嬢に送ったことはないけれど、普段から親しくしている友人なので、受け取ってはもらえるだろう。

あくまで、先日の件には触れず、近々ある社交締めのパーティーについて聞いてみる。今の彼女に僕がしてあげられることは多くないのだ。



そして、自然と文通が続くこと1か月。社交界の華が婚約破棄、という大スクープは瞬く間に広まった。基本的に一度結ばれた婚約が破棄されることはほとんどない。病気など、どうしようもない理由以外で破棄を申し出ることは非常識だからだ。


「ブランカ伯爵令嬢から申し出たそうですよ」

「お似合いの婚約者様でしたのに」

「何か問題でも起こったのでしょうか」

根拠のない噂も流れていく。本人が否定することも、肯定することもないからだ。


「何か声を上げないのですか?」

「今の私が何を言っても揚げ足を取られるだけですから。私は自分の潔白を信じているので大丈夫ですわ」

「なるほど。余計なことを言ってしまいましたね」

「いえ、ご心配ありがとうございます」

にこっと笑ったジニア様の顔は晴々としていた。それからしばらく、ジニア様はひたすら社交に勤しんでいた。良い新たな婚約者を見つけるためだろう。ただ、変わらず文通は続いている。




「エビネ、ブランカ伯爵家から縁談だ」

「ブランカ伯爵家ですか?」

「あぁ、お相手はジニア・ブランカ伯爵令嬢だな」

「…え?」


ある日突然父上の執務室に呼び出された僕は、いきなりジニア様からの婚約打診を言い渡された。

「嫌か?」

「嫌、ではないのですが、理由が気になりますね」

「特には何も書かれていないな。近いうちに2人で会って話し合いでもしなさい」

「わ、かりました…」




休日の昼間。僕からの招待に応じてルアーラの屋敷にやってきたジニア様は、とても貴族令嬢然とした態度だった。

「本日はお時間をいただきましてありがとうございます」

「い、いえ…」

「突然の打診に驚かれたことでしょう。まずはお詫びいたします」

「そんな、謝っていただくほどのことではありません!」

「「……ふふっ」」

「私たちにこのような物言いは似合いませんね。もうやめましょう」

「そうですね、疲れてしまいます」


僕たちは目を見合わせて笑い、普段通りの友人同士に戻ることにした。


「どうして僕に婚約の打診をしてくださったのですか?」

「元々非常に好ましい方だとは思っていましたし、辛い思いをしていた私を気にかけてくださいましたから」

どうやら、家長の言いつけで、といった理由ではなさそうだ。当然、家格や派閥なども鑑みて、当主が許可を出していることを前提としての話だが。


「そのように言ってもらえて嬉しいですね…」

僕自身、恋愛経験がないので、直接的に好ましいなどと言われると少し照れてしまう。ずっとパンセとセレンの話を聞く側だったので、こうなったことを嬉しく思う気持ちと共に、2人の凄さを実感する。



「どちらにせよ急なお話ですし、どうぞゆっくりお考えくださいね」

「ありがとうございます」

ジニア様との話し合いは、ほんの1時間ほどで終わった。お互いに忙しいので仕方がないが、別れる時に寂しいと思う自分がいることに少し驚いた。自分の中にこんな感情があっただなんて、今まで知らなかったから。



「エビネ、どうするんだ?」

「…お受けしようと思います」

「そうか、ついにお前もか」

僕はルアーラ伯爵家の長男なので、いずれ誰かと結婚して当主を継がなければならない立場にある。この調子だと政略結婚になるかもしれないなと思っていたくらいなので、好いた相手と婚約できるのなら嬉しい限りだ。




こうして、僕とジニア様は婚約をし、今日に至る。


「うぅっ、おふだりども、おめでどうございまずっ」

「ジニア、落ち着いて?」

友達の結婚式でメイクが崩れるほどに泣いている彼女が愛おしい。いつか自分たちもと夢見るくらいは許されるだろうか。

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