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【完結】ネガティブ令嬢、今世こそ自分を愛します!  作者: らしか
第3章

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本編完結記念SS③【アドベイラの物語】

SショートSストーリーと言いつつ、本編よりも長くなるのは毎度のことです…

私は、人生をロザリンド伯爵領の中だけで過ごすと思っていた。成人したら誰かと恋愛をして、結婚して、子供を産んで…そんな「普通」の人生になると思っていた。


「おはようアドベイラ。今日の髪型素敵ね」

「おはようございます、クララベル様。ありがとうございます…!」

それがなぜ、こんなふうに領主様のお嬢様とお話しするようになったのか、全ては約1年前、王立アカデミーの受験を決めたことから始まった。



『アドベイラ、ちょっと店番しててくれない?魚屋のおばあちゃんまでお届け物してくるから』

『はーい、任せて。いってらっしゃい』

私の家は昔から洋服屋を家業としていて、私も幼い頃から裁縫を学び、店番などの手伝いもしてきた。大きくなったらそのまま店で働くことになると思っていたし、お客さんと話しながら依頼を受けるのも楽しかった。旅人や商人が多く滞在するこの街では、色々な国の言語が飛び交っていたので、異国の言語や文化には幼い頃から興味があった。


そんなある日、店に来た旅人の1人が、王立アカデミーの話をしてくれた。彼は中等部、高等部に通い、今は各地を回りながら勉強を教えて回っているんだとか。

『平民でもいい成績を修めればいい職に就ける。学んだことは裏切らないからね』

『裏切らない…』


この日をきっかけに、私はアカデミーを目指すことにした。あくまで将来的に店を継ぐことは前提として、新たに生まれた夢を追うために。




入学式の会場、中等部Sクラスの制服を身に纏って前方の席に向かう。Sクラスの中では最後に来たので、座るときにちらりと顔ぶれを見てみると、私以外に女の子は1人しかいないみたいだ。思わずため息が出るほど綺麗な銀髪と大きなアメジスト色の瞳。しゃなりと背筋を伸ばして席に着いているお姿はまさにお貴族様そのもの。絶対にアカデミー以外では関わる機会のないお方であることはすぐにわかった。



『え、と…ク、クララベル・ロザリンドです。よろしくお願いします…』

ロザリンド。故郷を治める領主様のお名前だ。私と同い年のお嬢様がおられることは知っていたが、当然お会いしたことなどないので気が付かなかった。この国では珍しい銀髪の持ち主なのだから、気がつくこともできたのに。



こうして私はお嬢様と同じクラスになり、仲良くお話しするようになった。お名前を呼ぶことを許していただいた時は本当に嬉しかった。そして、クララベル様との出会いが私の夢を叶える第1歩となるのはまだ先の話。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

(高等部3年生/冬)



「アドベイラー!一緒にカフェテリア行かない?」

「えっ、あ、はい。ルードラくんは…」

「他の友達と外で食べるみたい」


彼はクラスメイトのジュリオくん。活発で誰にでも臆せず声をかけるムードメーカーだ。ジュリオくんはいつもルードラくんと一緒に昼食をとっているので珍しい。

私も、いつもはクララベル様とご一緒するのだが、今日はお休みしておられるので誰とも約束はしていない。


「そうなんですね、いいですよ」

「やったぁー!何かテイクアウトして、外のベンチで食べよう」


この日から、お互いに相手がいない日は一緒に昼食をとるようになった。ジュリオくんのことはずっと気になっているので、正直誘ってくれると嬉しい。クララベル様も、ルードラくんが他の友達と食べると聞くと、もしもジュリオさんに誘われたら遠慮せずに行ってきてね、と言ってくださる。本当に、どこまでもお優しい方だ。



そして、高等部4年生となり、アカデミーには自由登校となった頃、ジュリオくんは私を外出に誘ってくれるようになった。理由はわからない。卒業したら私がロザリンド伯爵領に戻るからなのかもしれない。

「アドベイラ、今週、どこか空いてる?」

「明後日なら空いてますよ」

「よかった!楽しみにしててね」


カフェや花畑、ウィンドウショッピングなど、決して長い時間ではないけれど、2人でゆったりと過ごす貴重な時間。

いつしか、自分の中でジュリオくんと過ごすことがあたりまえとなっていた。


そんなある日のこと。いつもと同じように2人でカフェへ行き、お茶をしていた時。

「ねぇ、アドベイラ。大事な話があるんだけど…」

「…はい、なんでしょう?」


ジュリオくんは急に改まった態度をとって、私を真っ直ぐに見つめてきた。

「ずっと前から、中等部の頃からアドベイラのことが好きでした。僕と付き合ってくれませんか?」

「…」

「だめ、かな?」

「……だめ、じゃないです。よろしくお願いします」

「本当に?」

「うそなんてつきませんよ?」


こうして私たちは恋人になった。長い長い友達の期間を経て。

卒業まで残り数ヶ月。一緒に過ごせる時間はもう多くはない。


「もっと早く告白しておけばよかったって思うこともあるけれど、これでよかったとも思うんだよねぇ」

「それはどういう…?」

「友達っていう強い信頼関係があるからこそ、恋人としてもうまくいってると思わない?」

「確かにそうかもしれないですね…」

ジュリオくんの他に交際経験がないので比較のしようがないが、周りの話を聞く限り私たちはうまくいっている方なのだと思う。何より、ジュリオくんが私を大切にしてくれるおかげなのだが。




「アドベイラ!受かった!合格したよ!」

「えっ!本当に!?」

「うん!!」

「おめでとうございます!なんだか私まで嬉しく…」

「ぅえっ!泣かないで!!」

この国で1番合格するのが難しい王宮文官の試験。それに、ジュリオくんは受かったというのだ。頑張りを知っている私としては泣くなというのが無理な話。


「春から立派な王宮文官ですね」

「アドベイラは地元に戻って教師でしょう?」

「離れ離れになりますね…」

「そうだね…」

私たちはまだ交際して2ヶ月あまり。そんな私たちが遠距離になることは、寂しく辛い。だから…


「ジュリオくん、今後の私たちについて、話し合いをしなければなりません」

「…えっ」

「私たちは春からそれぞれの場所で、新しい環境で生活を始めることになりますよね。忙しくなるでしょうし、そう簡単には会えなくなります」

「そうだね」

「手紙のやり取りをすることはもちろんできるけれど、寂しい思いをすることになりますよね」

ここまで話し、ジュリオくんは悟ったような顔をした。苦虫を噛み潰したような、そんな顔。でも私はこの話を途中で止めることはできない。


「私たち、お別れしませんか?」

「…」

「本当は、告白してくれた時からこうなるかもしれないとわかっていました。それでも、自分の好きという気持ちにうそはつけなくて、嬉しくて、付き合い始めてしまいました。お別れが、より辛くなることは明らかだったのに」

私だって、こんなことは言いたくない。本当はお別れなんてしたくない。一生この日が来なければいいのにって、ずっとずっと願っていた。でも現実は現実で。


「…いやだ」

「いやだって…」

「別れたい理由は遠距離になるから、それだけ?」

「はい、ジュリオくんのことが嫌いになったとか、そういう理由ではありませんよ」

「それなら尚更いやだ」

「でも…」

「お互いに好き同士なのに別れる理由なんてないよ。僕が会いに行って寂しい思いなんてさせない。それでもやっぱり別れたいと思ったら、その時に教えてよ。今のまま、お別れなんて辛すぎる」

ジュリオくんの目から、視線を逸らせなかった。いつもの明るさは優しさに変わり、私を納得させるだけの説明をしてくれたのだ。別れても、付き合っても辛いのなら、付き合っていようと、そう思った。


「…そんなの、反則です」

「ごめんね、ずるくて」

「許しません」


ずっと、遠距離で頑張っていけるのかもしれない。やっぱり、お別れしてしまうのかもしれない。それは誰にもわからない。私と、ジュリオくんの努力次第。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「アドベイラー!」

「しぃーっ!今寝たばかりだから静かにしてください」

「ごめんごめん。見て、懐かしいものが出てきたんだよ」

ジュリオの手には日にちが彫られた木箱が。懐かしい、と言われても見覚えはない。


「アドベイラから送られてきた手紙、全部ここに保管してたんだよ」

「えぇっ!」

片手で持つには大きすぎる箱の中には、びっしりと封筒が。ひとつ手に取って見ると、確かに私の字だ。


「懐かしい…」

「読み返す?」

「しませんよ!」

「えー、残念」

けらけらと笑いながら、私が書いた宛名を指でなぞったジュリオ。もう手紙を書かなくてもすぐに話せる距離にいることに、改めて感謝した。


「幸せ?」

「もちろん」

出会いには別れがあるものですが、できればアドベイラとジュリオのように、末永く幸せに暮らせれば良いですね(*´˘`*)

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