パーティー①
今話はキリのいいところまで進めるために少し長めです。
話の構成上、読みにくい文式となっていますがご了承ください。
結婚式は無事に終了し、残るはパーティーのみとなった。こちらは式と違って普段はあまり関わりのない人も招待されているので、人数は数倍となる。
ひと足先にチャペルを後にした私たちは、それぞれの控室に戻ってパーティー用の衣装に着替える。ちなみに私はラベンダー色のプリンセスラインドレス。本当はAラインドレスが好みなのだが、結婚式後のパーティーくらい華やかな格好をしないとダメよ、とお義母様に言われてしまったためこのようになったのだ。髪はひとつの大きな三つ編みにして肩に流す。おまけに生花を散りばめるのも忘れずに。
セレン様のエスコートでパーティー会場のホールに足を踏み入れる。そこには既に多くの人が待っていた。
ちらりとセレン様の方を見ると、微笑んで頷いてくださったので頷き返して淑女の礼をする。お忙しい中、私たちのために時間を割いてくださりありがとうございます、という気持ちを込めて。
私たちが会場前方の新郎新婦席に着くと、順番に挨拶が始まる。普段の夜会なら会場に到着した順となるのだが、今日は同時に集まっているので身分が高い人からとなる。
「セレン・カートレッタ、クララベル・カートレッタ、2人が無事に結婚式の日を迎えられたことを嬉しく思う。私もこの国の王として、2人の結婚を祝福し今後の活躍を期待する」
「ありがとうございます。夫婦共々尽力して参ります」
一時は私に王太子妃の打診があったこともあり、どうなるかと思ったが国王夫妻にも祝福していただけて嬉しい。王太子殿下には他に素敵な方を見つけていただきたいところだ。
「セレン、ララ、おめでとう。今日はなんだか体の調子も良くて気分が良い。可愛い孫たちが、結婚式をしただなんて、泣けてくるわい…」
「お祖父様、幼い頃から私たちを見守ってくださりありがとうございます。お祖父様の孫という名に恥じぬよう、頑張ります」
叙勲式で胸骨圧迫をしてから、私たちがしたこと以上のことをして頂いた。孫として可愛がっていただき、私に王宮文官という進路を示してくださった。そして今日、王族ではない私たちがこの大聖堂で結婚式を挙げることができたのもお祖父様の後押しのおかげだ。感謝しても仕切れない。
そしてその後も挨拶は続く。ウィルアイト公爵様、ヘリオドール公爵様、グレシャム公爵様。そしてその下に連なる方々からも。私がこの世界に来てからこれだけ多くの方と関わってきたのだと実感する時間だ。
爵位を持つ方々との挨拶が終わり、同年代との挨拶が始まった。こちらは、ほとんどが1度は話したことがある人たちなので、特段気負う必要はない。基本的には男性はセレン様が、女性は私が応対し、何かあった場合は助け合うという手筈になっている。
「セレン、クララベル様、おめでとうございます」
「おめでとう」
「ありがとうございます」
私たちより1年ほど前に結婚式を挙げられたグレシャム様とカロリーナ様。今ではベスビアナイト王国を代表するおしどり若夫婦である。
「クララベル、挨拶が終わったら私たちのテーブルまで来てくださる?聞きたいことがたくさんあるのよ」
「はい、もちろんですわ」
「楽しみにしているわね」
約束しなくても、私が社交界で親しく話せるのはカロリーナ様をはじめとするいつものメンバーだけなので、そのテーブルに向かうことは必然だ。
そして、自然と背筋がすっと伸びる3人の姿が目に入った。
「お二方、本日はおめでとうございます」
「「おめでとうございます」」
「お忙しい中お時間をいただきありがとうございます」
普段よく見ている行政部の制服姿ではなく、社交用の盛装をしておられる。
「セレン様、行政部の上官のヘリオドール様、ウィルアイト様、ゼーランディア様です」
「いつも妻がお世話になっています。ぜひ今後ともよろしくお願いします」
「彼女はとても優秀でこちらとしても助かっていますので」
普段はあまり直接的に人を褒めることがないヘリオドール様にそう言われるとなんだか嬉しい。ある程度仕事に慣れて出来ることも増えてきたが、まだまだ1課の文官としては未熟なので今後も厳しく指導していただきたいところだ。
「うぅっ、おふだりども、おめでどうございまずっ」
「ジニア、落ち着いて?」
またしてもぼろぼろと泣いているジニア様と、その横でジニア様を落ち着かせようと頑張っているルアーラ様。心なしか、以前までのルアーラ様よりもしっかりしていて大人っぽい印象だ。ジニア様という素敵な婚約者を得て、心情の変化でもあったのかもしれない。
「ジニア様にそうして祝っていただけて嬉しいですわ」
「次はエビネたちの結婚式かなぁ…」
セレン様は2人に聞こえないほどの小さな声で呟いたが、遠くない未来かもしれないと思う。仲睦まじい様子で話している2人を見ていると、本当にお似合いに見えるのだ。
すっと、流れるような所作で騎士の礼をし、ポニーテールを揺らした彼女。メイフェルはやはり会場中の視線を集めた。
「本日は誠におめでとうございます。おふたりの輝かしい未来をお祈りいたします」
「ありがとう、メイフェル。でも、そんなに畏まらなくても大丈夫よ?」
伯爵家とはいえ序列としてはかなり下の方に位置するマリンテリアの令嬢なので、侯爵子息夫妻である我々に社交界で丁寧な言葉を使うのは正しい作法ではあるのだが。やはり剣術の修行を共にし、仲の良い友達としてはもう少し砕けた話し方をしてほしい。
「いえ、それはまた後ほど」
社交界でさまざまに揶揄された彼女だからこそ、こうした礼儀作法に厳しいのかもしれない。彼女自身は淑女教育をほとんど受けていないので、それはあくまで騎士的なものだが。
「ほ、本日はこのような場にご招待いただき…ありがとうございます」
「「ありがとうございます…」」
「そのように膝をつく必要はありませんよ。今日はあくまで友人として招待したのですから」
アドベイラ、ジュリオさん、ルードラさんの3人は挨拶の列の最後尾に並び、順番が来た途端私たちの前に膝をついた。これではまるで、主人と臣下のようではないか。
「は、はいっ…」
会場は大聖堂で、周りは貴族ばかり。それもほとんどが伯爵家以上の場なのだから、平民として生活している3人にとっては非常に居心地が悪いであろうということは容易に想像できる。
「ここでは注目を集めて話しにくいですから、あとで後方のテーブルに集まりましょう」
セレン様の提案に間を空けずに、はい!と答えた3人。そこまで緊張をさせてしまって申し訳ない。




