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【完結】ネガティブ令嬢、今世こそ自分を愛します!  作者: らしか
第3章

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高等部卒業式①

後書きにお知らせがあります!

なぜ私が今、震える手で制服のスカートを握りしめ、唇を噛みながらセレン様の高等部卒業生代表挨拶を見ているのか。その理由を知るには10日前まで遡らなくてはならない。




『ララ、答辞を書いてみたから読んで欲しいんだけれど…』

『もちろんですわ、もうすぐ本番ですし』

放課後の教室でセレン様から受け取ったのは、10日後に行われる卒業式の答辞原稿だ。相変わらず美しい字で書かれているそれは、4(ページ)にもわたっている。


ひと文字ずつ、見逃しがないようにチェックしていく。セレン様のことなので、きっと間違いなどないのだろうが、私が丁寧に確認することが彼の安心材料となるのなら。


『特に気になる点はありませんでした。とてもセレン様らしい良い答辞だと思いますわ』

『ありがとう。ララがそう言うなら大丈夫だね』

微笑んだセレン様にそうですね?と答えていたその時、教室の扉が開いて、担任のおじいちゃん先生が顔を出した。


『クララベル殿、学長がお呼びじゃよ』

『…っえ、学長がですか?』

『なるべく早く来るように、とのことじゃったからの、急いだほうがよいぞ』

『わ、わかりました』

私は椅子の背もたれに掛けていたジャケットを羽織って、職員棟の最上階にある学長室まで急いだ。



『クララベル・カートレッタが参りました』

『あぁ、入りなさい』

『失礼致します』

中等部に入学してから8年間、何度も足を踏み入れたことがある場所だが、当日に要件を伏せて学長から呼び出しがかかるのは初回以来だ。


『急に呼び出してすまないな。やはりこういったことは直接伝えるべきであろう?』

ソファに腰掛けた私に、学長は1枚の紙を手渡した。それには国王陛下からの勅令が書かれていた。


クララベル・カートレッタに王立アカデミー卒業式での貴族代表挨拶を命ずる


驚きと、不安と、陛下に対する抗議の気持ちとが頭の中を駆け回って、混ざって、拡散した。

止まっていた呼吸をふうっと再開して、背筋を伸ばす。

『謹んでお受けいたします』


私はこうして貴族代表挨拶の役を受けたのだった。


貴族代表挨拶とは、卒業式で行われる答辞の一種だ。セレン様が行う予定になっているのは高等部の卒業生代表挨拶、私が命を受けたのは初、中、高等部の卒業生のうち、より上のクラスに所属する1番年上で身分の高い貴族が行う挨拶。卒業生代表挨拶と貴族代表挨拶は別の人物が行う必要があるので、史上初めて女性で高等部に進学した私のような例外ではなく、Aクラスの侯爵令息が行うものだとばかり思っていたのに。確かに、男女という分類をなくせば、条件に最も当てはまるのは私なのだが。

本来は、国王陛下が勅令を出して指定するようなことではない。今回は、まさに例外なのだ。


『そう嫌そうな顔をするでない』

『いえ、とても光栄なことだと…』

光栄なことだと頭では分かっていても、全生徒に加え教員、保護者、来賓が揃う場で、たったひとり答辞をすることが恐ろしくて仕方がない。いくら慣れてきたとはいえ、これは明らかにキャパオーバーだ。


『まだ当日まで日はある。十分に準備をすれば不安は和らぐだろう。君には頼りになる夫もいるからな』





「貴族代表挨拶、クララベル・カートレッタ」

「はいっ」

会場は驚きの声で満たされ、さらにその空気は2つに分かれた。女性である私が指名されたということに驚いた人と、私の姓がロザリンドではなくカートレッタであることに驚いた人。ほとんどは前者だったと思う。先日ジニア様から「現在の社交界はクララベル様とカートレッタ侯爵子息様のお話でもちきりですわ!」と聞いたから。


そんなことを考えながら、左手に紙を持って前方ステージへと上がっていく。振り返って来賓の皆様に淑女の礼をしてから演壇の前に立った。落とさないようにゆっくりと紙を開いて、大きく息を吸って、吐いて、吸って…声を張った。


「本日はこのように盛大な卒業式を挙行してくださることを、代表として感謝申し上げます。また、お忙しい中多くの方のご臨席を賜りましたことにも重ねて感謝申し上げます。


この国には、アカデミーに通わずに生活している人がたくさんいます。では、アカデミーでの教育は必要ないのでしょうか。私の答えは否、です。国の最高教育機関であるここ、王立アカデミーで学んだ者として、その知識を活用して人の役に立つ、これこそが私たちに課された責務だと思います。

これから先の人生、皆さんが適切な判断のもと正しく行動できる人間であることを、心の底から願います。


また、アカデミーに通った4年、または8年を思い返してみると———」


「———卒業生が飛び立つ空が晴空であることを、笑顔の花が咲くことを願って。

卒業生代表 クララベル・カートレッタ」


会場を飲み込むほどの拍手。気がついたら終わっていた、という感覚に近いほど何の感情もなかった。恐怖と緊張が襲ってきたのは、自分の席に戻った後だった。

今話で100話を迎えました!!(登場人物紹介とSSを除く)

ここまで続けることができたのも、読んでくださっている皆様のおかげです!

作者より、日頃の感謝を込めて特別エピソード(?)を活動報告にて公開いたします。今後とも作品、作者をあたたかく見守っていただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします(*´˘`*)

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