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【完結】ネガティブ令嬢、今世こそ自分を愛します!  作者: らしか
第3章

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セレンの朝

今話はセレン・カートレッタ目線で進行します。

朝、右側にララの温もりを感じながら目を覚ました。まだ空の端が白み始めたくらいの時間だ。

ララはまだ、夢の中。昨日は慣れないことをして疲れたのだろう。柔らかい銀髪を撫でて、閉じられた瞼に軽くキスを落とした。


起こしてしまわないようにそっと抜け出した僕は、私室に戻って身支度を整える。大きな音を立てないように、細心の注意を払って。



「父上、セレンです」

「あぁ、来たか。入りなさい」

僕たち夫婦の私室から、渡り廊下を通って建物の反対側にある両親の私室と父上の執務室。扉を叩くと、中から返事があったので遠慮なく入室する。


「朝早くにすみません」

「いや、構わない。他でもない、クララベルのことなのだろう?」

こくりと首を縦に振って、ソファに腰を下ろした。父上はお忙しいらしく、決裁の手を止めることなく話を進める。


「直接的にララに危害を加えようとする人物はいませんでした。会場内で中傷する人物が約1割。リストはこちらです」

つい先ほど、ロザリンドの使用人に紛れ込ませていた諜報員から届いたばかりの資料だ。主に2つのグループが中傷していて、一方は同世代、もう一方は母親世代だった。とても、ララには聞かせられないような内容のものばかり。直接言う人がいなくなっただけましだと思うべきか、未だに無くならないことを嘆くべきか。


「…エリンジウム、アークライト、ミュール、か。揃いも揃ってロザリンドより格下で、エリンジウムに関してはしつこいとしか言いようがないな」

エリンジウム伯爵家は、中等部のクラス対抗戦の際にララに絡んだ令嬢の生家。アークライトとミュールは子爵家で、エリンジウム伯爵令嬢と親しくしている令嬢がいるのだ。俗に言う、取り巻きだ。

当時、経済制裁を科し、カートレッタ侯爵家とロザリンド伯爵家連名の抗議文を送ったにも関わらず、陰口は辞めないようだ。やはり、人は簡単には変わらないということか。


「エリンジウム家の令嬢は、ブランカ伯爵令嬢のことも悪く言っているようです。我が家は直接的には関わりありませんが…」

「ブランカ伯爵令嬢はクララベルの大切な友人だろう。改善が見られないようなら、ブランカ伯爵に伝えるまでだ」

「ありがとうございます」

父上がそう言ってくださるのなら心強い。ララは自分が傷つけられることよりも、自分の周りにいる友人や家族を傷つけられることの方が敏感に反応する。そのため、ララが心を痛める要因になりうるものは徹底的に排除しておきたいのだ。



急ぎの用は済んだので、退出しようと席を立つ。今日の父上は朝早くから出仕なので、長々と居座っては迷惑だ。

扉の取手に手をかけて部屋を出ようとしたその時、父上の低い声が背中にぶつかった。


「…セレンは、大丈夫だったのか?」

後悔、やるせなさ、そして心配。そんな、父上の言葉。今までの自分だったら、気にしていません、と答えたのだろう。どんなに厳しい言葉をかけられても、気にしない、と自分自身に暗示をかけてきたから。


「はい、私の髪は絆なので」

「絆?」

「ララが好きだと言ってくれたので、他の誰から呪いだと言われても構わないのです」

「はははっ、そうか。強くなったんだな」

えぇ、と答えて部屋を出た。もう、心配には及ばない。




私室に戻り、ベッドルームを覗くと、ララが先ほどと変わらない姿で眠っていた。すうすうと寝息を立てているのが愛しい。ベッドに腰掛けてララの頬に触れると、…んん、と天使のような反応が返ってくる。

今はゆるく結ばれている口から紡がれる言葉に、何度助けられたことだろうか。彼女は僕が欲しい時に、欲しい言葉をくれる。ララは僕に感謝してもしきれないとよく言っているが、そればお互い様だと思う。僕たちはどちらか一方に与え続けて関係を成り立たせてきたのではなく、お互いに足りない部分を補い、励まし、時には甘やかしながらここまで来たのだ。そうやって築いてきた信頼関係こそが、僕たちの最大の強み。



「…せ、れん?」

「ごめんね、起こした?」

「うぅん、セレンに呼ばれた気がして」

まだ焦点が合っていないらしく、ゆっくりと瞬きをするララ。今、こんなにもあどけなくて可愛らしい彼女を自分ひとりしか見ていないということに、この上なく幸せを感じている。


「夢を、みていたの、セレンが出てくる夢…」

「どんな内容だったの?」

「んんっと…セレンと一緒に世界中を旅する夢だった、と思う。でも、海を渡れる大きな船はまだ安全じゃないし、ヒコウキも作れないから難しいかな…ここ以外にもタイリクはあると思うんだけどな」

焦点と思考がはっきりしてきたらしいララは、聞き馴染みのない言葉を使い出した。ニホンの言葉だろうか。


「うん、よくわからないけど、僕が出てくる夢を見てくれたのは嬉しいからいいや」

夢の中でも、ララの隣にいるのが僕ならばそれでいい。

ララとジニア様のことを悪く言うだなんて、命知らずですねぇ…

「クララベルを守る会」の人たちは怖いですよっ!

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