哀戦士達、互いを思いやる
「それよりごめんなさい」
「ん?」
「君の武器とか置いてきてしまったんだ。先祖代々の大切な物なんでしょ?」
ハルトの力だとヴァージニアを運ぶのが精一杯で、戦場に装備を置いてきた。
お陰で女の子と密着出来て幸せでしたとは流石に言えない。
「ああ、それなら気にしなくて良い」
「本当にごめん。気を使ってくれなくていいよ。怒られて当然の事をしたんだから」
「そうじゃない。問題ないんだっちゃ」
「ん?」
その間にも応接間まで移動。
ヴァージニアをソファに降ろし、ハルトは漸く一息をつく。
用意してあったスクロールに描かれた簡易法陣にて、装備一式が魔法で持ち主の元へ戻ってきた。
「おお! 魔法、初めてみたよ」
「送還のルーンが刻まれているから、直ぐに戻ってくる」
「良かった。君のことだから取ってこい言いそうだからねぇ」
「ほう、何なら今から行くだっちゃか?」
「失言でした」
「ふん」
鼻を鳴らすも、その顔は安堵で笑わうヴァージニア。
ハルトには感謝の気持ちだったが何も言えず今に至る。
元来の気の強さが裏目に出ていた。
「変態、この後どうするんだっちゃ?」
「いや、特に決めていないよ。僕は気が付いたらいきなりここにいたから、どうして良いのか分からないんだ」
「まだ、戦争は終わっていない。私もまた戦場に赴くことになると思うっちゃ」
ヴァージニアはその続きを言わなかった。
いや、言えなかった。
一日前までは会ったこともない赤の他人。
元々関係ない民間人を戦争に巻き込むのは騎士道に反する行いだからだ。
何より恩人に一緒に戦ってくれなんて厚かまし過ぎると感じて口を閉じる。
「そうだよね。君は騎士だもん戦うのが使命。でも、僕は思うんだよ。女の子が戦場に立つなんて辛すぎる。僕と一緒に避難しない?」
「ううん。それだけは絶対に無理。ここは私の故郷だっちゃ。貴族の子として皆を見捨てる事は出来ない」
「でも!」
「うるさい! この話はもうおしまいだっちゃ!」
「もがぁ!」
ヴァージニアはシュークリームを丸ごと口に突っ込み、文字通り実力行使で黙らせた。
その上で意を決して、「変態、あの……良ければ、」言葉を前に押し出すも、
「もぐもぐ、これ美味いなぁ。もっと欲しい」
「この豚が! もういい! お前なんて何処でも行ってしまえ!」
お嬢様は素直になれない己が性格を呪う。
大皿をどかっと置き、好きなだけ食えと言わんばかりにその上から大量の蜂蜜をぶっかけた。




