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未確認物体


「ヴァニシングライダーが出来ないんじゃ死んだも同じだぁぁ!」

『もう! とにかくハルちゃん、ちょっと待ってて!? 今助けに行くから!』


 と、長瀬凜は慌てて通信を切った。


 同時に、このクズの訴えが天界に届いたのだろうか、ほどなくして電磁音と共に360度ディスプレイは復旧。

 余程、神様というのは暇と時間をもて余しているらしい。

  

「おパンツ」


 ――そして、冒頭の衝撃的シーンへと戻る。

 

 ゲーム止めて真っ当な人間になると誓った初日の出の感動〈三時間で改心を挫折した〉を上回る、アップされた女子用のパンツが鮮明に写し出されていた。

 シワ、生地の縫い目、繊維までも忠実に再現されている。

 これで匂いまで再現されていたら、確実にスタンバイ中の第二のハルトがウエイクアップしていたであろう。

 しかも絶賛装着中。

 シミのない綺麗なおへそと太ももは、一生消えないようにハルトの脳内にダウンロードしていた。

 メモリーカードがあればバックアップも欲しいところ。


 何時からこのゲームはエロゲーになったと、ハルトは疑問に思う。

 父親から聞いたアーケードゲームの伝説、幻の脱衣麻雀並の衝撃だった。

 昔、エロ親父はこれの為に麻雀を覚えたそうだ。

 そもそもロボしか登場しないのに脱衣の意味があるのかと問いたいが。


 ハルトは静止画かと思っていたが、対象は痙攣のような動きを見せ、周りも風に揺られ青々とした雑草がアニメーションの様に動く。

 その動作は最新CGのように滑らかでリアルだった。


「何なんだこれは?」


 好奇心が旺盛で頭が足りないハルトでも、この異常事態に戸惑いが隠せない。


 細いくびれの両端には林または森のグラフィックが映して出されてる。

 アングルからいって木の根元で豪快に転けたが正解だろう。

 その証拠に木々のてっぺんが覗いていて、更にその先には流れる雲が悠々と青い空の海を航海していた。

 だが、葉っぱ一つ一つに至るまで同じじゃない。

「これって映画か?」


 ここで初めて実写という答えに行き着く。


『 お嬢様大丈夫だべか? パンツ』

『ヴァージニア様も相変わらずそそっかしいだべさ、パンツ』

『隊長は天然のドジっ娘なんだべなぁ。パンツ』


 枯れ葉を踏みつけるような音と共に、謎の複数のえらくなまった声がスピーカーから聞こえてくる。


『パンツパンツと、うるさいだっちゃあぁぁぁぁぁぁ!』


「あふぅ……」


 不意に鼓膜へクリティカルヒットをぶちかます程の高音アニメ声がハルトの脳内を、ズッキューン! というときめきカウント音と共に波動砲の如く突き抜けていった。

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