驚愕するリザードマン
『……………………』
ヴァージニアを操っているハルトと強者バクリュウキョウは互いを直視しながら大きく右旋回。
これからの勝敗を大きく左右する第一撃目をどう繰り出そうか、既に始まっている無言の駆け引きに、体を貸している騎士も気が気ではなかった。
だが、そんな心境など露知らず、操縦側のハルトは不謹慎ながら内心は高揚、期待に胸を弾ませていた。
日頃から修練を積んできた腕前が何処まで通用するのかと。
この間にも、ヴァージニアのライフポイントを頭に入れながら、数十手先まで視野に入れてシミュレーションしていた。
これが世界レベルゲーマーの標準スタイルである。
遊びは一般まで、直感はアマチュアまで、本気のゲーマーは今までの戦闘データーを念頭に置き、事前に一分一秒残さず使いきり戦略を練る。
「ウオオオオオオ!」
「せいやあああ!」
一合。
二合。
三合。
四合。
五合。
六合。
七合。
互いの目線が合わさると、開戦の合図ともとれる咆哮を皮切りに、まるで強力な電磁場に引き寄せられる様に激しく合わさる剣と戟。
何度も二つの魂の心情を表すような火花が辺りに飛び散る。
初手は基本。
お互い力量を推し測るように、正攻法で真正面から刃同士を重ねる。
「ヴァージニア・ウイル・ソード。本当にさっきのチビか?」
「驚いたか!?」
「おうさ!」
バクリュウキョウは剣を交えただけで、ヴァージニアの変化に勘づく。
初戦は刃を交えず一撃で空間を支配する事が出来た。
だが、今回は状況が違う。
自慢の昆さばきが一切合切弾き返された。
(うそん!? 変態ってこんなに強かっただっちゃか?)
しかし、それは当の本人も同じ。
想像した以上の成果に驚嘆、心中穏やかではない。
初めてドレスに袖を通したダンスで王族のボンボンを泣かせて、センセーショナルに社交界デビューしたときと同等の衝撃がここにあった。
八合。
九合。
十合。
十一合。
十二合。
十三合。
しかし実践経験の差、リザードマンが一歩一歩徐々に押し始める。
矛から派生した武器だけあって、リーチは圧倒的にこちらが不利だ。
しかも切ると突く機能を備えているので、変幻自在な攻撃に一合一合ヴァージニアを追い詰めていく。




