愚将VSゲーマー
『……何だこれ?』
ハルトは操作にも慣れディスプレイを僅かだが眺めるゆとりが生まれると、初めてある事に気づく。
敵が消滅する度に画面端に表示されるドロップアイテム『魔水晶のカケラ』。
数は×1000。
ヴァニシングライダーには存在しなかった用途不明アイテムに戸惑う。
上位ゲーマーは不確定要素は嫌う傾向があった。
当然だが、このゲーマーもその部類。
『まただ』
「どうしたんだっちゃ?」
何となく気になったので、脳内に映る怪訝な表情をしながら画面を覗き込んでいる相棒に声を掛ける。
『ヴァージニアさん、魔水晶って何なの?』
「魔水晶は魔族のコアだっちゃ。人間に置き換えれば魂に等しい」
『魂?』
画面の説明文では、魔力の結晶体としか書いていない。
「そうだっちゃ。でも、魔族なら誰でもあるというわけじゃなく、本能を律する理性を持ったモンスターを超えた存在じゃなければならない。それ以外はカケラだっちゃ」
「そう」
何の参考にならなかったが、一応は頭の片隅に置いておく事にした。
それだけの情報だけじゃ、保管量が有限であるかもしれないアイテムボックスの捨てる対象でしかない。
せめて換金アイテムであればと一類の望みをかける。
「邪魔だ、どけぇぇ!」
「ぎゃぁぁぁア!」
「やめてくださイ!」
「うごゃ! み、味方を殺すのは重罪でス!」
ソンゲンが味方を屠る度に、次のポイントへ狭い隙間を縫うように高速移動。
この度にハルトは治安の良い国で育ったあまちゃんだから良心が痛む。
とても、こんなエグい作戦を決行した同一人物とは思えなかった。
「逃げるなである! 臆病者め!」
「何だと!?」
『耳を貸さないで!』
ハルトはコンディション変化を恐れ、激昂したパートナーを嗜める。
「わ、分かっているちゃ! お前に全部預けているんだちゃ、今だけは余計なことは考えない。でも、変態、もういい加減仕掛けてもいいんじゃないのか?」
『いや、ヴァージニアさん、まだだよ』
移動出来る箇所も減っていき、そろそろではないかと、ヴァージニアは感情抜きにして遠回しに突撃を催促するも、ハルトには見えている景色が違った。
「……分かった、信じる。お前に全てを委ねるっちゃ」
『うん』
だが、仲間達の仇を目前に頭では理解しても、無意識に操作が反発している事をハルトは察して口にしなかった。
確かにハルトの作戦は功を奏し、先程の喧騒が嘘のようなゴミ屋敷を清掃した後の静けさがここにあった。
しかし、操縦者としては躊躇。
体力ゲージが残りわずかなので、ソンゲンの攻撃力を測りたくても、即死は避けたいので慎重にならざるをえない。
敵のステータスを確認出来ればと、ゲーマーとしてはこのクソゲーみたいな現実に悪態をついた。




