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実力よりも騎士のプライド


 どうしよう? もう! 何で本当にそこにいるのかな、と突然の来客へ冷静に対応していても内心はかなり戸惑っていた。

 度重なる戦いを掻い潜ってきたヴァージニアだが、どう値踏みしてもに一般兵士には見えないキョウシの佇まいに握った拳の中は汗をかく。

 こうして不覚にも自分に酔って実行した行いは、後悔と共にそのまま直すべき習慣病の一つとしてリストへノミネートしたのは言うまでもない。


「死者に祈りを捧げている最中だったのに、有翼人は随分無粋だっちゃね?」

「それは済まなかった。これでも待っていたつもりなんだがね」


 お互い軽口を叩いているが、この場で談笑する雰囲気でもない。

 ヴァージニアは手に取った父の形見を構えて、鷹の魔人キョウシは切っ先が鋭い長い槍を水平に構える。


「見たところ話の分かる奴ぽいが、出会った以上は戦うしかないようだな」

「……娘よ、悪いがこのままここにとどまさせることは出来ない。死にたくなければ去れ。立ち合っても我が槍がお前を突き刺すのは明白だからな」


 キョウシの鋭い黒いクチバシが陽光を浴びてテカっている。

 自信がみなぎっているような猛禽類の瞳は、ここから脱する方法を考えあぐねいてるヴァージニアを真正面から捉えた。


「ほう、見逃してくれるだっちゃか?」

「お前のような弱者など、我が愛槍と交える資格があると思うな」

「…………悪いがそれは出来ないだっちゃ。私もここまで生き延びてきた責任として、獅子王騎士団員の職務を全うする。それが父様と師匠に立てた誓いだっちゃ」


 見逃すという提案に戦わなく済むと触手が動いたが、ヴァージニアの中に息づいている騎士としてのプライドがそれを真っ向から拒んだ。


 大剣を扱うヴァージニアにとって槍使いは分が悪い。

 攻撃モーションが大きい分、隙が生まれやすいからだ。

 それに突くだけのレイピアや槍の攻撃だと、打撃系の武器に比べて攻撃が極めて早く、特に集団戦闘の野戦に適していた。


「我が槍を目の前にしてそれだけ豪語するとは、余程自信があるのか、それともただのうつけ者なのか」

「やってみれば分かるだっちゃよ!」

「それは一利ある。真の武人たるもの刃を交えれば、その者の思考や力量処か、人生までも覗き見ることも可能」


 キョウシは落ち着いた口調で語りながらも、ジリジリと己の間合いを詰める。


 攻撃範囲が剣に比べて圧倒的長い為、ヴァージニアもおいそれとキョウシの間合いに入る事は出来ない。

 それに武器は面積が少ない程、攻撃力が上がる特性がある。

 即ち面積が針のように尖っている槍に、油断して軽装になっている劣等騎士では相手にならないという事だ。

 

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