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ENDマークの誘惑

4

 

 馬が歩く。

 雄大な森羅万象の平地を歩く。

 主のような威厳を持って歩く。


 ヴァージニアの愛馬ナポレオンは軍馬特有の力強い踏み込みで大地に足跡を残す。

 まるで軍記のように、まるで生きた証のように、蹄の後が草を踏み潰し小石をめり込ませ、土のノートへ形跡を記した。

 まるで一定のラインで譜面にも見えなくはない。


 夕暮れの燃えているような紅蓮が、白馬のキャンバスへ映し出されオレンジ色へとなっていた。


 ナポレオンは幸い無傷。

 もし死んでいたら本当に恨まれていたかも知れないと、今になって馬鹿な事をしたと後悔するハルト。

 味方機には攻撃が当たらないというシステムの可能性を土壇場で賭けたのが、たまたま功を奏したのだ。


 ヴァージニアは一路、ヴァン公爵 ギュスターヴ・デュ・ナイトハルツの陣営に向かっている。

 いや、現在は知らないのだ。

 正確には開戦当初の本陣を目指している。

 ハルトが推理ゲームで身に付けた現場百回の精神だ。

 何もしないより、何かした方が後悔はしないとはヴァージニアの談。

 よって進路はいるかどうか分からない兵どもの夢のあとへと向かう。


 ヴァン公爵。

 英雄にしてこの戦いを終結出来るただ一人の騎士。

 ギュスターヴは騎士団第一席で、事実上の責任者だ。

 この戦争の本質を理解している一人。

 ゴスロ伯もヴァン公爵だけは他の貴族と見えている次元が違うと称えている。


「ヴァン公爵ってそんなに凄いの?」

『ああ、最強無敵、それに格好いいっちゃよ』

「それ関係ないんじゃ……」

『何をいっているんだっちゃ。ルックスは英雄英傑には絶対必要不可欠なものだっちゃ』


 ヴァージニア達は敵の術中にはめられている事をヴァン公爵に知らせなければならなかった。

 ホーキンス侯爵だけがターゲットだとは考えにくい。

 同時進行で他の貴族も狙われているのは自明の理であった。


「さいでやんすか」

『ははん、さてはお前妬いているな? そうかそうか、さもあらんさもあらん』

『はいはい……………………ん?』


 不意打ちとは――

 だしぬけに相手に攻撃をしかける、または予告しないで何かを行う時に使う言葉。

 予想だにしないとか奇襲とかにも使う。


 即ち、「また来た」ENDボタンがホタルの光みたく淡い色を画面へ灯した。


 ファンなら誰でも知っているが、ヴァニシングライダーにはそんな仕様はない。

 エンディングロールはボスを倒すと勝手に流れる。

 だからである、点灯する度、未知の遭遇に弱いゲーマーの心を強く惹き付けた。

 押すべきか押さざるべきかと、なけなしのお小遣いで課金したい衝動と半日戦うぐらい思い悩んだのは言うまでもない。


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