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勝利の代償


 こうして、ホーキンス侯爵襲撃事件は首謀者死亡で取り敢えず終幕を迎える。

 バクリュウド軍直属従軍中郎シャセキは、ヴァン公爵の居所を突き止め、なおかつホーキンス軍を壊滅させて敵軍の士気に止めを刺そうとしたつもりだったが、思わぬ伏兵の手によって手勢共々返り討ちにあった。

 そして、裏切り者にして唯一の生存者は最期の時を迎える。


『…………はぁはぁはぁ』

『何でだっちゃ! 偽者、何で私を庇ったんだちゃ!?』


 ヴァージニアは大地に力無く横たわるシュレリア男爵を揺する。

 風穴を開けられたので止めどなく血が流れ出ていた。


『さあな、分からん。脳細胞に刻まれてるお前の父の記憶なのか、それとも共に過ごして父としての自覚が芽生えたのか。ただ、言える事は気が付いたら守っていたという事だ』


 体は痙攣を起こし息は絶え絶えながらも淡々と語るシュレリア男爵。

 そこは腐っても戦士、偽者ながら口調には貴族としての気概と風格を残していた。


『今まで騙してきた奴の事なんて信じられるか!』

『ヴァージニアよ、お前こそ俺を謀っていたではないか? その力があれば学舎で蔑まれなかった筈。それどころか王国の近衛騎士団への道も開けた』

『これは私の力じゃないだっちゃ』


 ヴァージニアは説明しなかった。

 これから死に逝く者へ余計な情報は与えたくないので、ハルトの事は割愛したのだろうか。

 よってその真相は小さな胸の内だ。

  

 一方、


「僕が勝ち誇ってまた油断した」


 我に返ったハルトはそう独りごちると悔しくて椅子を叩く。

 一人気負って突っ走った結果、ヴァージニアを更なる窮地へ追いやってしまった。

 常軌を逸したスキルを使った最大のカウンター、確かに心を折るには適切でも同時に愚行でもある。

 派手に暴れると、それだけ選択肢を狭め今後の進め方が危うくなるからだ。

 結果、敵全軍がここへ押し寄せてくる可能性も出てきた。


『何があったかは知らん、詮索も今更するつもりもない。ただ、これだけ広範囲に影響を与えたのだ。今のままではお前はどのみち活路はない。屍を晒すのみよ』


 そう指摘するシュレリア男爵。

 目を虚ろであったが、軍人としてヴァージニアの行動を指摘する。

 

『ここが再び戦場になると?』 

『それどころか伏せていたヴァン公爵も動いて決戦の地になりかねない』

『そうなったら私達の負けだ…………』

 

 正面切っての兵力同士のぶつかり合いだと、魔族と人間の力対力になるのでほぼスタットライオ王国側に勝ち目はないであろう。

 ハルトによる一時的感情の暴走で、王国滅亡の危機に瀕してしまった。  


『ふふふ、この状態からどうやって勝利するのか、俺は先に地獄で観戦するとしようか、ぐほっ! …………さらば』

『待て! お前にはまだ聞きたいことがあるだっちゃ!』 

『………………ヴァン公爵が全ての鍵だ……………………』


 シュレリア男爵は静かに息を引き取った。


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