シューティングスター
『かんらかんら、我らの勝ちだ人間!』
勝ち誇るシャセキ。
この間にも部下に目配せして脱出を試みていた。
「…………ヴァージニアさん」
『お前ら、ここから去れ。さもないと私が今度こそ切り刻む』
怒りで感情を制御出来ないハルトを察して、代わりにヴァージニアが最終勧告をする。
剣を敵の方向へ突きつけると、
「「「ひいいいいいイ!」」」
残ったゴブリン兵達は上官を残してこの場から逃亡。
今から来る危機とここまでの成果で恫喝には十二分の効果があった。
『貴様ら待てぇ! 部隊指揮者を見殺しにするのは三族皆殺しの大罪ぞ!』
だが、低能のゴブリン達にはそんな事理解出来る筈もなく、シャセキの命令を無視して本能に従って己の命を守る事を最優先。
加えて目もくれないのは、普段から人望は無いのが窺える。
『あれをどうするんだっちゃ? このままじゃ、ここ一帯火の海だ』
「勿論、お返しする。しかも10倍返しだよ」
『無理だと言いたいが、今のお前なら本当にやりそうだっちゃ……』
ヴァージニアの懸念は確信となる。
スキル『カウンター』のレベルをポイントを消費して最大まで引き上げるハルト。
それでもまだ足りないのか、ずっと押し続けてエラーが表示されていた。
心配しているからだろうか、凛からはメールがひっきりなしに送られてくる。
『ハルちゃん、絶対に駄目! レベル最大にしたらそっちにどんな影響が出るか分からないよ!』
『後先考えろ! そんなことしたら絶対敵軍に警戒されるんだよ!』
『駄目! 駄目ったら駄目!』
『馬鹿ハルト! 無視するなぁぁ!』
だが、放置。
冷静にガチギレしているハルトは、もう、聞く耳を持たなかった。
弓矢が効果範囲に到達。
ヴァニシングシステムがカウンターレベルMAX発動を告げる。
覆っていた火矢の雨は反転。
レーザービームまたは流星並の速度で持ち主へと帰還した。
着弾後、暫しの無音。
まるで夜明け前の静寂。
刹那、
四方から鼓膜を刺激する轟音と共に凄まじい土煙が空中を舞う。
煙が晴れると全方角、強大なクレーターが多数出現。
まるで隕石が集団で落ちた程、地形が変わっていた。
勿論、底無し沼も影形残ってはいない。