終息か集束か。
取り敢えずのケリは着いているのに、何故かスッキリしない面持ちで焦りを抱いていた。
何となく頭にモヤが掛かってる。
そういう時は何かあるとゲーマーとしての経験が警鐘を鳴らす。
なので早急に終わらしたい電子遊戯界の旅人は、ヴァージニアに気取られないように、レーダーや目視で警戒を強めた。
戦闘時とは打って変わり静かになったフィールドの画面、ヒラヒラと舞うモンシロチョウが投影。
耳にするのはスピーカーを通して流れてくるヴァージニアの可憐な呼吸音だけ。
一見のどかで穏やかなな午後。
しかしながら、風景は緑1色ではない。
改めて辺りを見渡すと魔族の血と共に、無数のゴブリン兵達が地面に横たわっていた。
生き残る為とはいえ、やってしまった事の大きさに今更ながら気付く。
これは遊びじゃないんだと実感しつつハルトは苛む。
良心の呵責と正当防衛、死体に顔をしかめながら凝視と逸らすを繰り返した。
『変態、覚悟を決めろ。私達は騎士として戦いの責任を取らなければならない』
「…………うん」
これはハルトに説いているのか、それともヴァージニアが自身に言い聞かせているのか。
真相は残念ながら本人の心の内。
ただ、ここで示せるものは、画面隅の対話用サイドカメラに映った彼女が、光の屈折加減なのか、心なしか彼岸花みたいに儚かった事のみ。
――――だが、そんな時だ、『……………………』魔族側に動きがあった。
シュレリア男爵が剣をゆっくりと下に置き、一歩一歩鎧の重い音を奏でながら、ヴァージニアへ真っ直ぐ近づいてくる。
何を狙っているのかまだ皆無だったが、状況から接近戦を想定するのがセオリーだ。
降伏をするのであれば戦場のけじめとして予めそう言うはず。
しかし、さにあらず、戦士は沈黙を守る。
その進む姿はデュラハンかオートマタ。
大戦士の風格か、ヴァージニアは思わず圧倒されて後退さった。
『変態、戦うだっちゃ!』
「待って、まだだよ」
ヴァージニアが先走らないように、主導権をこっちチェンジして待機。
「無防備の相手に手は出せない」
『この期に及んで何言っているんだっちゃ!』
「僕らは何としても、生き延びなければならない。だからこの想定外の有り様を見極める」
それに確証は無いが、良くない虫の知らせを心の奥底で感知した。