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あまちゃんハルト


『何も返ってこないだっちゃね』

「あれは覚悟を決めた顔、もしかして本当に、いや、でも……」

『予想外過ぎて、この私に対してぶつける言葉を持ち合わしていないんだっちゃ』

「そうなのか?」


 ハルトの計画が鈍り始めていた。

 元々は平和な国にどっぷり浸かっているあまちゃん。

 それに加えて全力同士だったから分かる境地もある。

 弱肉強食、弱者淘汰、数え切れない程の勝負から培ったゲーマーの勘が働いたからだ。


 男爵は井戸を汲み上げるかのように持てる技術で次々とヴァージニアへ剣術を叩き込んでいる。

 ベテランでも躱せない濁流や雪崩を彷彿させる程の暴威を浴びせたのだ。

 しかしながらヴァージニアは倒れる何処か、今は真逆、大柄の体躯を小刻みに揺れさせる。


 逆の立場なら自信は粉々で降伏申請するかもしれないと、ハルトは一瞬脳裏に絶望感が去来。

 それでも自身の甘さでヴァージニアを苦境に立たせた事がある身としては、一概に承服出来る事ではない。


 それでもゲーマーとして、一人の人間として、「ヴァージニアさん、ここまでだよ。戦いは終わった」シュレリア男爵の戦意を喪失させたと結論を出した。


『何を寝ぼけた事を言っているんだっちゃか? 魔族達はまだ生きている!』

「ヴァージニアさん、本当に男爵達を殺す気なの?」

『今更何を言っている!? あいつは魔族、しかも私のかたきだっちゃよ。それ以外どんな選択肢があるんだっちゃか?』


 ヴァージニアが見据える先にはゴブリン達が男爵の後ろで、武器を投げ捨て、泣き震えながら恐怖や諦めなどによって、戦う気を失っている。

 

「でも、共に暮らしたんでしょ?」

『うるさいうるさい!』

「戦意が無くなった相手に剣を向けるのは騎士道精神に反するのでは?」


 そしてそれは今のジェントルマン達へと受け継がれる。


『しかし、口を封じないと私達の事がばれるだっちゃ!』

「そうだね。でも、ゴブリンは低能だ。脅して口止め料に何かをやれば大人しく巣に帰るよ」


 これは戦う前、長瀬凛と案を出しあった時の一つ。

 ゴブリンがもしも降伏してきた時の対処法だ。

 論じあったので抜けはない。


『でも!』

「ヴァージニアさんも僕も殺し合いは大嫌い。それに出来るだけ君には殺しをして欲しくはない。例え襲ってくる敵に対してもだよ」

『変態………………』


 ハルトの意図は他にあった。

 例え偽物だろうと父は父。

 もしヴァージニアさんが男爵を殺せば一生の心の傷になる。

 それだけは絶対避けたかった。

 もし駄目だった時、ヴァージニアの父殺しの罪は自分が被ろうと覚悟を決める。


「戦争をしている最中に甘い事を言っているのは重々承知だよ。でも――」

『本当、あまあまだっちゃ。分かった。もう、戦わない。これで良いだろ?』


 ハルトは操作権を再び元々の持ち主へ委譲すると、ヴァージニアは剣を静かに下におろした。


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