二人の出会いは最低だった
――――数十分後。
「取り敢えずお父様の元へ戻ろうと思うだっちゃ」
振り向き様に今後の方針を残った皆に告げる。
責任が重すぎてこれ以上単独では早死にすると判断したからだ。
経験の浅い軽率な自己判断が一番危険だと、狩りに出た時、男爵に教わった教訓がこの場に活きた。
それよりも黒板代わりに自分より背丈が高い根へ文字を刻んだが、非常時とはいえ信仰してきた神木からバチは当たらないか地元民達は心配になっていた。
そしてそれは、文字通り的中する。
「――うわあぁぁぁぁぁぁ!」
「うゆ?」
木の葉が騒ぐ音と共に頭上から降ってきた核弾頭ならぬ石頭、「「あたぁぁ!」」岩と岩がぶつかり合うみたいな鈍い衝撃音が鳴り響いた。
「天罰だべ」
「神の采配だべ」
「女神様をキズモノにしたお仕置きだべ」
部下達は当然の結果と頷く。
「いたた……、何なんだっちゃ」
「…………」
ヴァージニアは衝撃と重力の法則で座り込み、右手で雑草を鷲掴んで、反対の手で頭に出来たタンコブを擦った。
現状を把握するべく、落ちてきた物体Xを親の仇でも見るように観察する。
人間の男で歳の頃は少女騎士と同等かそれ以下。
一般より清潔感があり、魅力があると言えなくもないが、貴族に比べたら豚と孔雀程の差はあった。
だが、それよりも、
「いたた、何だろうか、僕の後頭部が生暖かいのだけど?」
余程持ち主が嫌いなのか再びズボンはズレ落ち、代わりにパンツを枕に少年が上向きに寝ていたのだ。
むにむにと感触を確められる。
「♂%*¥¥∞&ΩΣΨ~~!」
声になら無い叫び。
貞操観念が強いこの鉄またはオリハルコンの処女は、初体験中の膝枕最終形態に、心の整理整頓が追い付かなかった。
「うきゃあぁぁぁ! ななな、何で空から不審人物が降ってくるっちゃあぁぁぁぁ!」
「ぐほっ!」
少年をドライブ気味に蹴り飛ばすと、錐揉み回転しながら墜落後、「きゅうぅぅ」ノビた。
「追手だべか?」
「それにしては格好が変だっぺよ」
見たことも聞いたこともない出で立ちをした少年が天から落ちてきたのだ。
警戒心の強い田舎者は皆恐れ慄く。
色の抜けた黒髪、光の加減で虹色に反射する紺色のジャケットとズボン、見たこともない紋章。一方、顔は緩んでいるが普通で安堵する。
「こ、ここは何処?」
体が軋むのか 少年は挙動不審気味に言うならばゼンマイブリキ人形、または作業用ロボットを彷彿させる奇妙な動きを披露する。
もちろん頭上には腫れ上がった大きなコブが一つ、偉そうに自己主張していた。