落体の法則
『――――ヴァージニアさん分かった?』
「ああ、分かったっちゃ。私には理解出来ない事がな」
折角自分なりに優しく教えたつもりだったが、予想通りの答えにハルトは苦笑い。
思わずズッコケた拍子にレバー操作を誤りヴァージニアへイナバウアーを決めて、「いたたたたたたたた!」硬い体で海老ぞりなぞやらせたから悲痛の声をあげた。
『あ、ごめん!』
「早くしろだっちゃあああ!」
ハルトは急かされるままに直ぐ様操縦桿を定位置へ。
「馬鹿が! もう少しで私の上半身と下半身が別れてしまうところだったっちゃ!」
しかし、それはない。
人間の体はそんなにやわにできてはいないのだ。
新体操なら頭とお尻が付くし、雑技団なら頭を股にくぐすこともいとも簡単にやってのける。
この衛星からのレーザー攻撃みたいな奇襲作戦もしかり。
この尋常じゃない速さは不可能と考えがちだが、普通の人間なら8G、訓練を受けたものなら10G以上も耐えることが可能なのだ。
落ちた後の衝撃とかその他の二次被害を度外視にすれば誰でも出来る。
ではハルトはどうやって二次被害を抑えているのか?
それは慌てずともこの後、答えが出る。
ハルトは舞いながら次のターゲットを定めた。
この手際の良さに、ヴァージニアはこの状態でよく標準を合わせられるなと感心。
一回離れてもう一周、落ちるタイミングを測る。
『ドレスだからヴァージニアさんの踊っている姿見たかったなぁ』
「それそれ、何で鎧を脱がせたんだっちゃ? 重い方が破壊力や下に着くスピードが上がるだろうに」
うぶな少女なので瞬間的に赤くなるが、今回は疑問が勝つ。
『いや、上がらないよ。重い物ほど速く落下するという認識は間違い』
「何を馬鹿なことを言っているんだっちゃ?」
『うんとね、落体の法則ってやつがあるんだけど、物体を自由落下させた場合、その落下加速度は物体の質量によらず一定なんだよ。まぁ、これに空気抵抗をプラスすると別だけどね』
空気抵抗があると本人に多大なダメージがでる。
挙げるのなら宇宙ごみや隕石が大気圏で燃える現象が有名だろうか。
なのでスキルを使用して真空の状態でやるしかなかった。
「なんだそれは?」
『ああ、言い方が悪かったね。なるべくヴァージニアさんへ落下後ダメージが無いように、落体の法則を利用したんだよ。だから鎧は逆に邪魔なわけ』
何言っているのか分からなかった。
本当に何を説明しているのが解せなかった。