ブルースカイダンシング(ヴァージニアサイド)
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――――再び視点はヴァージニアサイドへ。
「ぎゃああああああああア!」
禍禍しき小鬼のけたたましい断末魔。
返り血、顔面に浴びても怯まない少女。
空、閃光の柱立つ。
「私は一体何をしているんだちゃああああああ!?」
耳をつんざくような雄叫び。
癖が酷いブロンドの少女は摩訶不思議な行動に自身を問う。
実行している本人でさえまるで理解がおぼつかない。
そう、気が付いたら華麗に回転して遥か上空へ戻っていた。
両腕をクロスさせ胸元へ当て、スケーター顔負けのフォームが美しく艶やかに決まる。
ただ落ちている筈だったヴァージニア達は何故か天空世界でフィギアのように踊っていたのだ。
これが驚かなければ何だというのだ。
『イエーイ! これが僕の必勝の策さ』
脳内に少年の言葉がダイレクトに響き渡る。
ただ、必死さが伝わって来ないので少女は馬鹿にされている気分になった。
「これの何処が作戦なんだっちゃ!? まるで社交ダンスだっちゃよ!」
しかし、ダンスというより盆踊りやマイムマイム。
華麗なる躍動ある動きとは程遠い駄目駄目さだ。
元々ダンスが苦手で体が石膏のように硬いヴァージニアが、幾らハルトに操られているとはいえ、そんな簡単に芸術の域へ達する事など出来る筈もない。
ちなみに鎧はミッションの邪魔になるから脱いでいた。
しかし、男子よ、残念なお知らせだが服は勿論着ている。
光明はスカートなのでパンツが見える事ぐらいだろうか。
装備スタイルは、ヴァージニアとあまり長さが変わらないグレードソードと、なるべく身軽にするために青のドレス型ワンピースに両腕と両足だけ装甲を残していた。
「これはどういう原理なんだっちゃ!? 何故また空の上なんだ!」
『言ってもヴァージニアさんにはちんぷんかんぷんだよ?』
「はぁはぁ、だとしても分かりやすく説明するのが、体を貸している相手への最低限の義務だろ?」
ヴァージニアは空気が薄く息が苦しくなってきたのか、口で息を取り入れている。
しかもリズムに乗って踊っているので、体力の消耗も激しかった。
『踊っているのはこれも能力の副作用だよ』
「またかだぴょん!」
大跳躍のスキルも再び効能を発揮したのは言うまでもない。
特殊能力の副作用にまだヴァージニアは慣れていなかったというか、覚悟が決まってなかった。