フライアゲンだぴょん!
『上手く行ったみたいだね。ヴァージニアちゃんフライアゲン!』
「うん、これも長瀬さんのお陰、ありがとう」
『いえいえ、どう致しまして。これも我が野望の為だよん。異世界配信計画に待ったなし!』
むふっ! と、興奮気味に語る凛。
きっと受話器の向こう側では腕を振り回しているに違いない。
しかしだ、もしも、そんな事をやったら間違いなく大炎上する未来しか思い浮かばないのは伝えるべきだろうか。
それどころか謎の黒服組織に拉致監禁もあり得ると、ハルトの漫画ゲーム脳が導きだしていた。
『でも、この跳躍スキル、副作用あるけど良かったの?』
「このぐらいなら些細な事だよ。それに僕にはご褒美かも」
『さいですか。あああ、私もヴァージニアちゃんのロリボイス聴きたい!』
「…………そうだね」
本当は僕らより歳上なんだと告げたかったが、すっかり幼女と信じ込んでいる凛のショックが大きそうなので、出かかった言葉を喉辺りで無理矢理塞き止めた。
『――変態! なに独り言を呟いている、キモいっちゃよだぴょん!!』
「ええ! それは酷い」
だが、実際通学していると、ワイヤレスで会話している場面に出くわすが、宇宙人と交信しているのではないかと相当怖いものがある。
まさにそれではないかとハルトは悟った。
ちなみに回線が別なので、お互い直に通話することは出来ない。
効果が現れ始めた相方の文句を聞きながら、ハルトは改めて、スキル『跳躍力』の説明文面を読み返す。
スキル 跳躍力UP レベル3
言葉の通り機体の跳躍力をあげる。
使った奴は思わず語尾にぴょんが付く。
気分は因幡の黒兎だぴょん。
開発スタッフの下らないユーモアが、一人の少女の羞恥心に打撃を与えているとは、作った当の本人でさえ思わなかったであろう。
『それはそうと、これは何なんだぴょん!』
『ヴァージニアちゃんの語尾が聴きたかっただぴょん!』
それぞれ不満の声を上げる少女二人。
本当はリンクしているのでないかと思わず疑ってしまう。
「ごめん、ヴァージニアさん。これは大ジャンプしたの副作用なんだよ」
『この摩訶不思議な事も変態のせいかぴょん!』
「うん、でもそのお陰で、勝利するイメージが沸いてきたよ」
モニターには小マップを表示。
その下には敵の数と体力ゲージが同じく表示されている。
別にこれがあるからわざわざ跳んでまで目視することは無かったのだが、シミュレーションゲーマーな分かると思うが、イメージを膨らますには全体を見渡せるフィールドが一番だった。
勝利条件
敵の殲滅
敗北条件
ヴァージニアの死亡
舞台は整った。
後はスタートボタンを押すだけ。