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互いに譲れないものがある


「さあ、変態、私に乗ってくれ!」


 ヴァージニアはそう両手を広げウエルカムするが、「………………………」ハルトは何故か微動だにしなかった。


「どうした?」

「いや、コックピットを開けるキーがキスとして、いざするとなると、何処にどうやれば良いのか分からない」


 ハルトは赤面する。

 ウブナネンネじゃあるまいしと言いたいが、意外と硬派で純真なのだ。

 今時ゲームにロマンスを求めているレトロな求道者。

 オンリーワンを名乗っても良い程。

 なので、ヴァージニアみたいに開き直っていない。


「お前が私の靴にキスすれば良い話だっちゃ、豚野郎らしく」

「それ絶対違うと思うし、人間としての最後のプライド捨てたくないやい!」


 いい加減、その母直伝の『男家畜思想』を改めないと取り返しのつかない事になる――と、意外と真面目に悟りを開くハルトだった。


「ちっ! じゃあ特別にナポレオンの鞍に口付けを許す。まだ私の残り香が残っているっちゃよ」

「こ、この合法幼女、本当に僕の事を変態だと思っているんだね…………」


 いやさ、今までのヴァージニアに対する行いの経緯を繰り返しリプレイしても、この回答にしか行き着かないではなかろうか。

 それどころが、貴族のお嬢様相手に処断や手打ちにならないだけ破格の扱いのような気がするが、疎い本人は気付かない、主人公なので気付かないのである。


「何でも良いから良いから早くしろだっちゃ!」


 抜いた両手剣をハルトの前に突き出す。


「もしかして、ヴァージニアさんは僕に触れて欲しくないのかな?」

「貴族の令嬢のお嫁入り前を舐めるなよ」


 そう、貞操観念がしっかり教育されているので、戦時でなければ処女どころか触れる事さえ許されないのである。


「じゃあ、ヴァージニアさんがまた僕のおでこに…………」

「いや、譲歩して変態が私のガントレットに…………」


 平行線。


「……………………」

「……………………」



 そのまま、口論に発展して両者ともよく分からない持論を展開。

 御託というか講釈を延々と続ける下手の長談義を否めなかった。


「とにかく、このままじゃらちが明かない。取り敢えず色々と試そうだっちゃ」

「何処が自分の許せる及第点か探すわけか…………」

「そういうことだっちゃ!」


 こんな事をしている場合なのはお互い理解している筈なのだが、そこはまだ花も恥じらう少年少女、避けては通れない道がある。

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