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クーデター

 

 小高い丘から一望出来る地平線には何も映らなかった。

 眼下に広がる草原は不気味なほど静か。

 そこに展開している軍勢も微動だにしない。


 ハルトもヴァージニアに釣られて視界に入るものを検分するも、四六時中アワビの如く画面に張り付いていたゲーマーが視力オールグリーンな訳もなく、目を細めても違いなど分かりもしなかった。


 残念ながら所詮はゲームに特化した駄目高校生。

 ヒロインの心の機微が分からない鈍感に、背景の不自然さに気付くという高等技能など体得しているわけもなかった。


「何がおかしいのか僕にはさっぱりだよ」 

「元から変態には期待していないから気にするなだっちゃ」

「それは扱いが酷い」


 そろそろ天日干しの体勢が辛くなってきたゲーマーは、何とか起き上がろうと踏ん張るが日頃から運動不足が祟って腹筋に力が入らなかった。

 即ち元の木阿弥。


「キノセイダッチャヨ」

「なら何故に片言なのかな。それに昔ここが海だったら凄いけど太古から草だけだったんでしょう?」

「何を訳分かんないことを言っているんだっちゃか? ――――海? あれ? 何か思い出しそう」


 互い戦いを共に生き抜いた同志、気が安らいでいた。

 だがしかし、運命とは常に非情を愛しているものだ。

 ハルト達の大切な時間を蝕む程深く侵食していく。

 まるでセピア色へ褪せていく写真のようだ。


「ホーキンス侯爵、貴様にはもう付いていけない!」


 そして…………再びヴァージニア達を戦いへいざなうのは、この一言から始まる。


 これまでの経緯を冷ややかに傍観していた騎士達は、「「「もう、我慢ならん! いい加減にしろ! この売国奴め!」」」おもむろに剣を抜刀。


「お前ら侯爵たるわしに剣を抜くとは無礼であろう!」

「侯爵様、我が後ろにお下がりください」

「う、うむ」


 シュレリア男爵は侯爵を守るためにすかさず間に入った。

 鍛え抜かれた男爵とその軍馬が騎士達を威圧する。


「これ以上獅子王騎士団に泥を塗るおつもりなら、侯爵様を追放する!」

「魔族と通じている事がばれたら我々まで疑われるではないか!」

「王国の面汚しめ!」


 侯爵に幹部達が罵倒する。

 そもそも貴族間に忠誠心など上辺だけで実際は存在しない。

 実益のみであった。

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