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騎兵団


「だからどうした! 斥候とは先行して偵察するのが任務。部隊が死ぬも生きるのもそれ次第なのだぞ! もし侯爵様を死なせたら貴様だけでなく三族まで皆殺しだ!」


 斥候の役目を全く理解していない貴族の騎士に活を入れるシュレリア男爵。

 そこにいたのはヴァージニアの頼もしい父ではなく紛れもない軍人だった。


「わしからそなたの父に騎士には向いていないと手紙を送ろう。親元に帰るがよい」

「貴族だという事に安堵し研鑽を怠った愚か者め。この誇り高き獅子王騎士団の恥さらしだ! 今すぐ騎士などやめてしまえ!!」

「ひいいいい!」


 余程堪えたのか、または恥ずかしかったのか、ドラゴンに威嚇されたように伝令は逃げていった。


「近頃の若い貴族は騎士道を忘れている。嘆かわしい限りだわい」 

「如何致しますか? この様子だと偵察自体が童の遊戯程度。もし味方であれば狼煙など何らかの動きがあると思われます。ここで待機して様子を見るのがよろしいかと…………。その間に私が様子を窺ってきましょう」


 男爵は前にでるが、


「いや、それには及ばず。代わりを立ててこのまま進もうぞ。それにこんな所に敵なんて居るまいて。味方だ味方。わしは疲れた。早く休憩したいのだ。そなたも察せよ」

「………………はっ、承知致しました。侯爵様の判断に従いまする」


 シュレリア男爵は胸に手を置き一礼。

 煤けている使い古された麻のマントが揺れた。

 所々大袈裟に縫われているのは不器用な一人娘の仕業。

 しかし、心が籠っていたので委細咎めなかった。


 隊列は現状を維持したまま緩やかな斜面を進み小高い丘を上がる。 

 陣を構える為だ。

 

 陣とは布陣の形状の事を指す言葉。

 元々は陳の俗字であり、陳の意味である『並べる・連なる』から来ていた。

 

 布陣は常に絶対的有利な地形にするものであり、周囲に警戒して敵より先手を打てる陣構えこそ至高。

 有利な配置場所は高所。

 特に天然の障害物を側面や後方に置く事を是非とした。


 騎兵の場合、障害物がない平地または助走が付く丘の上が定石であり、お家芸『重装騎馬突撃』を繰り出すのに適している。

 逆の場合は障害物や沼地など、機動力がある騎兵の力を削ぐ場所に敷く。

 特に塹壕は人力で行う中では最大の効果があり、軍の命運をも変えていた事は歴史が証明。


 戦争の勝敗とは常に有利な地形へ部隊を配置する事であらかた決まると言っても過言ではない。

 布陣を馬鹿にするなかれ。

 何事も勝負とは始まる前から始まっているからだ。

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